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2003年8月27日 (水)

牧阿佐美バレヱ団『ローラン・プティの世界 −デューク・エリントン・バレエ−』

2003年8月27日(水)&30日(土)&31日(日) Bunkamura オーチャードホール

[演出・振付]ローラン・プティ [音楽]デューク・エリントン
[装置]ジャン=ミッシェル・ヴィルモット [照明]ジャン=ミシェル・デジレ
[衣裳]森英恵、ゼニア スポーツ(ゼニア ジャパン株式会社)、アルビエロ・マルティニ

今回の改訂版を観て、新国立劇場がいかに広いのかを改めて実感。初演と比べると装置も簡略版でイマイチちゃちだし。でも、『デューク・エリントン・バレエ』というタイトルなのにエリントンをまったく感じさせなかった初演に比べると、ダンサーたちには格段の進歩があった。それがゲスト・ダンサーの力によるところが大きいとしても、ここはひとまず評価したい。

【Act1】

1) The Opener
ジェレミー・ベランガール

黒いノースリーブTシャツに黒いパンツ。音の捉え方もいいし、腰も柔らかい。何より、やんちゃな雰囲気がいい。エリントンを踊るならこうでなくっちゃ。これなら、「いつものバレエとは違うンだな」という心構えが、観客の方も持てるでしょう。

2) In a Sentimental Mood / Mr.Gentle and Mr. Cool
女性コール・ド16名、男性コール・ド16名、菊地研

冒頭、ピンクの衣裳の女性たちがアドリブ(即興演奏)に合わせて順番に登場。できれば、ここは踊りにもアドリブ感を漂わせて欲しい。続いて、白いTシャツにグレーのベスト+ストライプのパンツ姿で男性陣登場。歩き方がいただけない。イマイチ音にノレてない。ま、回数を重ねるごとによくなってたけどさ……。
途中で見せる組体操みたいな箇所で倒立を披露していた今勇也。他の曲でも何度か見せていたので、どうやら倒立担当らしい(笑)。

中盤のベース・ソロで菊地研登場。あら、意外と音にノレてるわ。ラスト、ひとり残ってのピルエットとジャンプは日によって出来不出来あり。

3) Don't Get Around Much Anymore
ルシア・ラカッラ、パンジャマン・ペッシュ

光沢感のあるダークグレーを基調にした衣裳。
いやいやいやいや、何を踊らせても素晴らしいルシア・ラカッラ。曲のタイム感やフレージングを完璧に理解してる。パンジャマン・ペッシュもフロロとはまったく違う表情を見せてくれて楽しい。

4) Solitude
上野水香、男性コール・ド16名

白いTシャツ+黒いパンツ、ふたり1組でバーを持つ男性コール・ドを前に、祈りを捧げるようなポーズで佇む白いユニタード(胸の部分だけグレー)の上野水香。ラカッラのすぐ後か……この順番は観ててツライなぁ。何でだろう? エスメラルダ同様、踊りが流れてるような気がする。パとパのつなぎがよくないのか?

それにしても、最終日まで照明がダンサーの動きについていけてないのは如何なものか?

5) Happy Go Lucky Local
ルイジ・ボニーノ、塚田渉

ふたりのボクサーのコミカルなやり取り。ちなみに、バンテージは手袋タイプ。言ってくれれば巻き方を教えたのに(笑)。
これ、初演の正木亮羽の方が全然よかった。だいたい、塚田渉じゃボクサーに見えないし。ま、それなりに楽しめる小品ではあるが……。

6) Come Sunday
ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス、ファビア・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ、クリス・ジョブスン

始まってしばらくすると、ディレイかかってます? ってな感じで、音がダブって聴こえる。う〜む、どこかから漏れているのか? そんなわけないよな……ってことで、休憩時間にPA(音響)オペレーターに確認したところ、マスターテープの問題だそうな。女性ボーカルのアカペラに一瞬ピアノが絡む、実にいい雰囲気の曲なのに。勿体ない。

7) Afrobossa
ルシア・ラカッラ、ジェレミー・ベランガール、パンジャマン・ペッシュ

今回のために新しく振り付けた1曲。
青い衣裳のラカッラ、黒いTシャツに黒い短パンのベランガール&ペッシュ。オレ樣なラカッラと下僕ふたり(笑)。3人のバランスが拮抗しているから、とにかく観ていて気持ちがいい。
舞台全体にバラけていた四角いスポットが3人に集まるラストの照明が洒落ている。

8) Hi−Fi Fo Fums
アルタンフヤグ・ドゥガラー、男性コール・ド10名

白いライニングに白いタイツ。あはぁ、体操部ですかぁ?(笑)
延々続くドラム・ソロをバックに、リーダーの提示するテーマを部員が真似る構成。これでアドリブ展開でもあれば、「テーマ→アドリブ→テーマ」というジャズの基本を踏まえていることになるのだが。ついでに、最後はフリー・インプロヴィゼイション(完全即興)合戦とかどうよ? ダメ?
をを! アルタンフヤグ・ドゥガラーは黒髪に戻ってる。弾力ある踊りで、フェビュスの時よりずーっといいじゃん。ちょっと見直したかも。

【Act2】

9) Mood Indigo / Dancers in Love
ジェレミー・ベランガール

2部の幕開けもベランガール。黒のパンツ、手にはコイン。
気持ちいいぐらいのスウィング感。ここでも、音の捉え方の巧さと腰や上体の柔らかさが目を引く。コミカルな振付もバッチリ。実にチャーミングだ。

10) Sophisticated Lady:Chelsea Bridge / Satin Doll
ルシア・ラカッラ、ファビア・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ、塚田渉、菊地研

ひとりの女と3人の男。誘っては逃げ、逃げては誘う女。ひたすら追っていく男たち。
初演はお子ちゃま感丸出しだった菊地研だが、ほんの少し大人になったような。でも、身体が薄いから相変わらずタキシードは似合ってないなぁ。カッコつけの演技にひと工夫欲しいぞ。

11) The Telecasters
パンジャマン・ペッシュ

肌色タイツに髪ベットリ撫でつけたペッシュ。
初演では菊地研が踊ったソロだが、何故か今回はペッシュが踊る。前回の記憶が忘却の彼方なので比較はできないが、わざわざ彼に踊らせた理由がわからない。ペッシュ向きじゃないような気がするのよねぇ。
レヴェランスでは投げkiss。意外とノリのいいタイプ?

12) It don't mean a thing (If it ain't got that swing)
ジェレミー・ベランガール、ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス、ファビア・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ、クリス・ジョブスン、男性コール・ド13名

白Tシャツ+黒パンツ。ベランガールを中心に全員で歌いながら踊る。
あのぉ、歌うならCD買ってフレージングのひとつでも勉強して下さい。杓子定規なエリントンなんて聴きたくありません。ま、初演よりマシになってたけどさ……。
スウィングしてないダンサー数名。ここでも腰がやわらかいベランガール。菊地研もいい感じ。

13) Caravan
ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス、ファビア・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ、クリス・ジョブスン、男性コール・ド11名

前の衣裳の上だけ脱いだ格好。いかにも“キャラヴァン”なわかりやすい1曲。
「肋、浮いてるよ……」と、思いっきり仰け反った1年前よりは筋肉もついてきた菊地研。その調子。

14) Cotton Tail
ルイジ・ボニーノ、上野水香

もしかして、上野水香ってリズム感悪いのかしらん? この曲には、もっと弾んだ感じが欲しいのに、ちっとも音にノレてないぞ。
それにしても、いつまで「可愛い」路線をいくのだろうか? 本人の意志というよりも、プティの願望なのかも知れないが……。

15) Ad Lib on Nippon
草刈民代、アルタンフヤグ・ドゥガラー、男性コール・ド13名

日の丸よろしく真っ赤な円をバックに、やはり真っ赤な衣裳に身を包んだ草刈民代。美しい。自分の見せ方もよくわかってる。さすがだなぁ。
男性コール・ドは黒の長袖Tシャツ(胸や背中にプティ直筆の字やイラスト入り)に黒いパンツ。
草刈民代が片膝立ちの男性陣の上を歩いていく箇所があるのだが、一瞬落ちそうになる。初演の時も落ちそうになってたし、結構難しいのかしらね。

途中から草刈民代とドゥガラーのパ・ド・ドゥ。そのふたりに絡む逸見智彦、塚田渉、今勇也、菊地研。この4人が蝶のように両手をヒラヒラさせて入ってくるのは、衣裳が森英恵だから?(笑)
メロディーラインやハーモニーが実に日本的。改めて、曲そのものを再発見させてもらったよ。

16) Kinda Dukish Rockin'in Rhythm
ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス、ファビア・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ、クリス・ジョブスン

フィナーレ前の箸休め? この3人に踊らせておけば、とりあえずジャズっぽいし。
う〜む、実にエリントン楽団らしい1曲だわ。

17) Take the "A" Train
ルシア・ラカッラ、草刈民代、上野水香、ルイジ・ボニーノ、ジェレミー・ベランガール、パンジャマン・ペッシュ、アルタンフヤグ・ドゥガラー、ホセ・アルダイール・アコスタ・ロドリゲス、ファビア・ライムンド・デ・アルメイダ・アラガオ、クリス・ジョブスン、女性コール・ド10名、男性コール・ド10名

ビリー・ストレイホーンの代表作で、エリントン楽団のオープニング・テーマ。
ひとりずつ丸い穴から滑り台(のようなもの)を思い思いのスタイルで滑り降りてくる男性コール・ド。黒の革っぽい上下。ちなみに、一番最初が菊地研(最終日は初っ端からイケイケ)。
続いて、黒のミニドレスの女性コール・ド登場。そして、最後にソリストたち(ラカッラ、草刈、上野の3人は白のミニドレス)が中央から登場してフィナーレ。

誰よりも弾けていたのがペッシュ。舞台ギリギリまでダイブしたりしてるし。でも、ベランガールも負けてない。コール・ドでは妙に菊地研がノリノリ。終盤はブンブン腕を振り回してる。勢いはあるけど、もう少し上体を立てた方がキレイだと思うのよねぇ。

カーテンコールではプティも登場(最終日は三谷恭三芸術監督も)。
どの日もだいたい2〜3回は繰り返し踊っていた。途中、男性陣が横1列に並び、下手から順に上手方向に体を傾けていく箇所があるのだが(ウェーブみたいな感じ)、1回目では1番上手のダンサーが袖に飛ばされ、2回目では2番目のダンサーが倒れ、3回目では3番目のダンサーが倒れ隣のふたりにボコボコにされるという、絵に書いたような正しいアドリブ展開を披露(笑)。ダンサーたちがとーっても楽しそうに踊っていたのが印象的。

【補足】

●PAについて
PA卓は2F上手バルコニーに設置(1F中央に置くほどの規模ではないし、電源が引ける場所が限られているので)。音源はCD-R。客席用とは別に、ステージ上にもダンサー用のモニターを設置(上手、下手にそれぞれ複数ずつ)。プログラムがふたつあるので準備はかなり慌ただしかったらしい。

●ジャズとは何ぞや?
簡単に説明すれば、アフリカ系アメリカ人のダンス・ミュージックをルーツに持つ音楽、といったところか……。リズムの取り方ひとつとってもクラシックのそれとは明らかに違うし、何より、クラシックが楽譜を忠実に再現するものであるのに対し、ジャズではアドリブ、つまり即興性が大切な要素となっている。
上にも書いたが、演奏の基本は 「テーマ→アドリブ→テーマ」 。必要最低限の決まりごとを踏まえ、そこに演奏者のオリジナリティを出していくことが肝要なのだが、17) Take the "A" Train は、そのあたりを意識して作られていたような。

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