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2003年9月18日 (木)

シアターコクーン・オンレパートリー2003『エレクトラ』

2003年9月18日(木) Bunkamura シアターコクーン

[作]ソフォクレス [翻訳]山形治江 [演出] 蜷川幸雄

「姉と弟が父の復讐のために母(とその情夫)を殺害する」この物語については、アイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデスというギリシャ悲劇の三大詩人がそれぞれに作品を残しているが、今回の上演はソフォクレスによる『エレクトラ』である。

エレクトラ:大竹しのぶ
オレステス:岡田准一
クリュタイムネストラ:波乃久里子
クリュソテミス:山口紗弥加
アイギストス:原康義
ピュラデス:月川勇気
守役:塾一久

三方を壁に囲まれた舞台。急勾配の床。まるで、客席に向かって迫ってくるようだ。

時は早朝、アポロンの神託に従って復讐計画に着手するために帰国したオレステスが、守役の老人と親友ピュラデス(無言役)とともに登場。「今こそ事に当たるべき時」と告げる守役に、計画の詳細を明かすオレステス。

3人の退場と入れ替わるように登場するエレクトラ。父の非業の死を嘆いているところへ、16人のコロス登場。彼女たちとともに、さらに繰り返されるエレクトラの嘆き。それはやがて、母クリュタイムネストラとエレクトラの対決へと続くが、そこに突然もたらされるオレステスの死の知らせ……。

ひとり残され、嘆き、悲しみ、絶望にうちひしがれるエレクトラ。その姿を目の当たりにしたオレステスは、ついに名乗りをあげる。「自分こそがオレステスだ」と。悲嘆から一転して歓喜へ。そして、到来する復讐の時!

1時間45分。姉弟の復讐劇をノンストップで一気に見せる。
全編ほとんど出ずっぱりの大竹しのぶ。表情、声、身体、そして、観客の感情まで完璧にコントロールしている。悲嘆と歓喜の間を揺れ動くエレクトラの心理が手に取るようにわかる、というよりも、すべての観客をエレクトラの感情の渦に巻き込むかのよう。とてつもなく大きな存在感に圧倒される。

その大竹に対峙する岡田准一。冒頭、長年にわたり思い焦がれていた場所をひとつひとつ確かめるように歩き回る姿から、ギリシャの強烈な陽射しや乾いた風を感じる瞬間もあったのだが、口を開いた途端がっかり。滑舌がよくない。凛々しい立ち姿など見るべきものもあったので、そのあたりは今後の課題。

また、母親殺しの葛藤が薄い印象もあるが、これはむしろ戯曲がその点をぼかしていることによるものだろう(殺害場面も実際には出てこない)。ソフォクレスによる『エレクトラ』の主眼は、あくまでもエレクトラの心の動きにあるのだ。

ところで、今回の舞台って、このふたりの(“激しい”でも“大胆な”でも何でもいいけど)絡みが売りなの? いや、まぁ、絡んじゃいたけどさぁ、この程度なら売りにもならんでしょう。数年前に同じく蜷川演出で上演した9時間(長いような、短いような)のギリシャ悲劇『グリークス』でこの姉弟を演じた寺島しのぶ&尾上菊之助の方が、実生活でも姉弟であるが故にもっと生々しかったぞ。

波乃久里子も口跡がイマイチ。これは中村屋の家系ですか?(同じく口跡のよくない中村勘九郎の実姉)
山口紗弥加は呼吸と身体の使い方がまだまだ。変に力が入っていたりして、観ているこちらが居心地の悪さを感じる。
コロスについては、白石加代子が16人欲しい、って感じか? もともとは歌舞担当なのだから、コンテンポラリー系のダンサーにやらせてみるのもありかも。でも、それだとセリフが厳しいか……。

ジャニーズ絡みの舞台は初めて。いつもの蜷川やシアターコクーンの客層とはかなり違う。地方から来ている人も多いのか、ロビーではいろんな方言が飛び交ってるし(笑)。入場の際の荷物チェックが徹底しているのにも驚いた。カメラは全部差し押さえ。後で返却されるけど。

終わるとスタッフに誘導されてそそくさと出ていったので誰だかわからなかったが、ジャニーズのアイドルが客席にいた模様(1階客席が少しざわついていた)。

カーテンコールではちょっとしたアクシデントも。確か2度目に出てきた時だったと思うが、岡田准一に花束を渡そうと、舞台に駆け寄るひとりの女性。ところが、岡田本人はまったく気がつかない。そのままその女性がスタッフに連れ戻されそうになったところを、大竹しのぶが受け取って“弟”に渡していた。いろんな意味で、さすがです、しのぶ姉さん。

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