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2003年11月23日 (日)

歌舞伎四百年 吉例顔見世大歌舞伎 昼の部

2003年11月23日(日) 歌舞伎座

久しぶりの歌舞伎座。顔見世興行だけに、正面玄関の上には櫓、入り口脇には「大関」の積物。芝居小屋の華やかな気分をたっぷり満喫した1日。

『梶原平三誉石切 −鶴ケ岡八幡社頭の場−』

梶原平三景時:片岡仁左衛門
梢:中村芝雀
奴 菊平:大谷友右衛門
囚人 剣菱呑助:坂東秀調
青貝師 六郎太夫:坂東吉弥
俣野五郎景久:中村歌昇
大庭三郎景親:市川左團次

源義経を失脚させたという印象が強く、あまり好意的に描かれることのない梶原平三景時を「情理をわきまえた武士」として描いている珍しい演目。見所は、刀の目利き、二つ胴の試し斬り、手水鉢の石切り(題名になっている)の3ケ所。

ちなみに、私のハンドル重花丁子(じゅうかちょうじ)は、刀の刃文の名前。好きなのよ、刀。ということで、刀の目利き場面を特に楽しみにしていた。

まず、袋から刀の柄の部分だけを出す(鞘の部分は袋に入れたまま)。袋は折り返して紐で縛り、鞘を袋ごと抜く。刀がその姿を現わすと、縦にして刀身をじっくりと見る。次に、横にしてじっくりと見る。そして、再び縦にして、今度は背から刀身全体をじっくりと見る。その間、梶原は懐紙を口にくわえている。懐紙をくわえるのは、「息がかかって刃が曇るのを防ぐため」と言われるが、「息や唾が刀にかかっては失礼」ということもあるらしい。仁左衛門の梶原は、この懐紙をくわえて鑑定する姿がとても美しかった。

刀の持ち主である六郎太夫の家は源氏所縁のため刀身に「八幡」という銘が刻まれているのだが、今回、この銘もしっかり確認できた。

手水鉢の石切りは初代吉右衛門型と十五代目羽左衛門型があるそうな。
客席に後ろ姿を見せるのが吉右衛門型で、羽左衛門型は、六郎太夫と娘の梢を手水鉢の両側に立たせ、水に写るふたりの影を二つ胴に見立てて刀を振り下ろし、ふたつに割れた手水鉢の間から飛び出してくる。仁左衛門は羽左衛門型で、颯爽と飛び出してくる。その姿に「剣も剣」「切り手も切り手」と畳み込んでいくセリフが小気味いい。続けて、大向こうが「役者も役者」と声をかけることもあるが、今回はなかった。

梢の芝雀、六郎太夫の吉弥、共にいい。剣菱呑助の酒づくしは秀調。これはイマイチだったかな。

『船弁慶』
中村富十郎一世一代にて相勤め申し候

静御前、平知盛の霊:中村富十郎
源義経:中村鴈治郎
舟長 三保太夫:片岡仁左衛門
舟人 岩作:市川左團次
舟人 浪蔵:中村東蔵
武蔵坊弁慶:中村吉右衛門

せっかくの「一世一代」だったが、富十郎は体調不良のため18日夜の部から21日まで休演。私が観た日は休演開け2日目ということで、本調子にはほど遠い感じ。前シテの静御前と後シテの平知盛の霊の演じ分け云々という以前に、最後まで勤められるかドキドキしながら見守っていた。鴈治郎、吉右衛門、仁左衛門と、豪華な顔合わせは嬉しかったが……。

寒さいよいよ厳しき折から、ご自愛のほどお祈り申し上げます。>トミー

『松竹梅湯島掛額 −吉祥院お土砂の場/四ツ木戸火の見櫓の場−』

紅屋長兵衛:尾上菊五郎
小姓 吉三郎:中村時蔵
八百屋娘 お七:尾上菊之助
釜谷竹兵衛:尾上松助
若党 十内:大谷桂三
長沼六郎:澤村由次郎
下女 お杉:坂東竹三郎
母 おたけ:澤村田之助

前回(3月の南座)、菊之助のお七が「すんごく可愛かった!」と、好評だったので、思いっきり期待していた。ンで、ホント、すんごく可愛かった!!

序幕の《お土砂》は笑劇で、紅屋長兵衛こと紅長(べんちょう)が、八百屋の娘お七と寺小姓・吉三郎の恋のために一計を案じ、真言秘密の加持を受けたお土砂(病人にかければ忽ち平癒し、亡者や墓にかけると罪障を消滅して福を得、硬直した死人や頑な心の者にかけると柔らかくなるという功徳を持つ品)を用いて大騒動を巻き起こす。

人間ピラミッドを作って縄跳びをする“アミノ式”(あくまでも真似です、本当にやるわけではありません)や肩や腕を揉みながら歌う“プチシルバ”といったCMネタや、セールスドライバー姿(佐川急便?)の秀調が花道から登場し、その後を、わざわざ靴を脱いで手に持って「お客様、困ります〜」と追いかける歌舞伎座案内係の女性など、アドリブがガンガン飛び交う。あまりのベタさに苦笑する場面もあったが、客席は大いに沸いていた。

最後はツケ打や幕引きも登場し、全員お土砂をかけられクネクネと倒れていくのだが、その際、幕引き役の東志也がバレエダンサー顔負けの180℃開脚を披露。身体、柔らかいのね。

欄間の天人になって隠れる菊之助が可憐で美しい。吉三郎の時蔵も悪くはないが、ワタクシ的には、もっとちゃんとした女方で観たかったなぁ。

大詰の《火の見櫓》は人形振りで演じられる。
愛しい男を救うため、極刑を覚悟で火の見櫓の太鼓を打ち鳴らすお七。降りしきる雪に衣裳の赤が鮮やかだ。

「翼が欲しい、羽根が欲しい、飛んで行きたい、知らせたい」

人形振りの無表情が、逆に恋一筋の激しさを浮き彫りにする。
人形遣い(黒衣)の菊市郎と菊史郎もよくやっていたし、竹本との息もピッタリで見応え充分。ただ、何度か足先が見えてしまったのは残念(足先が見えないように工夫されてはいたが……)。

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