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2003年12月22日 (月)

新国立劇場バレエ団『こうもり』

2003年12月22日(月) 新国立劇場 オペラ劇場

[振付]ローラン・プティ [音楽]ヨハン・シュトラウスII世
[舞台美術]ジャン=ミッシェル・ウィルモット [衣裳]ルイザ・スピナテッリ
[照明]マリオン・ユーレェット、パトリス・ルシュヴァリエ
[指揮]デヴィット・ガルフォース [管弦楽]東京フィルハーモニー交響楽団

会場に置いてあった新国立劇場12・1月公演案内[Stage Note No.63]によると、「ヨハン・シュトラウスII世の同名オペレッタも、フランスの振付家ローラン・プティの手にかかればこんなに洒落たバレエに」と、ある。
前にオペレッタを観ているのだが、プティ振付によるバレエは登場人物をかなり大胆に整理し、“こうもり博士”ことファルケ博士の仕返し物語を、ベラとヨハンの夫婦の物語に巧く移し換えている。

ベラ:真忠久美子
ヨハン:山本隆之
ウルリック:吉本泰久
メイド:楠元郁子

グランカフェのギャルソン:奥田慎也、マイレン・トレウバエフ、グレゴリー・バリノフ
フレンチカンカンの踊り子:大森結城、西川貴子、前田新奈

チャルダッシュ:マイレン・トレバエフ、遠藤睦子、西山裕子、鹿野沙絵子、川村真樹、鶴谷美穂、丸尾孝子
警察署長:ゲンナーディ・イリイン

【プロローグ】

序曲。オケの音は幾分湿気っているものの、そこそこ期待できそうな演奏。
中央に佇む妖艶な貴婦人。その長いドレスの裾を掴んで、まわりを取り囲む男性陣。実に華やかな幕開け。でも、ちょっと衣装が小林幸子入ってる?(笑)

【第1幕 第1場 夫というものは恋人のように振る舞えるもの?】

青いドレスに赤毛のベラ。真忠久美子、可愛い。って、それじゃダメじゃん。
5人の子持ちで夫に構ってもらえない主婦。「夫は自分を愛しているのだろうか?」という疑念に苛まれ続けている彼女が、突如ゴージャスな美女に変身して夫を翻弄する、その落差を見せなくては物語が成立しない。ここはもっと「垢抜けない所帯じみた家庭の主婦」を協調して欲しかった。

ヨハンの山本隆之。レット・バトラー(に扮したクラーク・ゲーブル)風の口ひげはよく似合っていたが、遊び人にしてはややクールな印象か。

ウルリックの吉本泰久。うわっ、踊りが軽い! けど、道化っていうか、忠犬ハチ公っていうか……。う〜む、私がイメージしていたウルリックとは全然違う。ま、勝手にオペレッタに出てくるオルロフスキー公爵(と言うより、それを演じたカウンター・テナーのヨッヘン・コワルスキー)をイメージしていた自分が悪いンだけど、でも、それにしたって、もうちょっと“大人の男”の雰囲気はあってもいいと思うぞ。

メイドの楠元郁子が好演。食事のシーンの振付が面白い。

【第1幕 第2場 男というのは、飛んで行ってしまうもの】

夫婦の寝室。ベラがネグリジェ姿で誘いをかけるも、すでに寝ているヨハン。ところが、彼女が諦めてベッドに入るや否や、こうもりに変身する。ってことで、ホントに飛んでるよ(フライングしています)。家庭から解放される亭主っすか。なるほど。

【第1幕 第3場 夫に顧みられない妻が献身的な男友達に期待できること】

ひとり取り残されたベラはメイドに電話を持ってこさせ、ウルリック相手に嘆いてみせる。その間のベラとメイドの踊り、電話のコードを巧く使ったりして、なかなか見せる。

ウルリックが駆け付け、いざ変身!
真忠久美子は手脚も長く、スタイル抜群。黒のミニドレス(ってゆうか、ビスチエドレス?)に黒のまとめ髪(赤毛はかつらだったのね)がメチャメチャ色っぽい。見開いた目がコケティッシュ。
ウルリックによるゴージャス美女指南。でも、やっぱり忠犬ハチ公な吉本泰久。客席をよく笑わせてはいたが、物語すべてを支配しているような余裕は感じられない。いいのか、それで???

【第1幕 第4場 所詮男は男】

ギャルソンの踊りが見事。三者三様なのだが、決めるところは決める。
相変わらず癒し系なグレゴリー・バリノフ。好き。

ヨハン登場。続いて、ギャルソン姿のウルリックにエスコートされたベラが登場。ゴージャスな美女の登場に男たちの視線釘付け。このあたり、真忠久美子は実に堂々としたもの。艶やかな踊りでヨハンを翻弄。

コール・ドで一際目立っていた厚木三杏(たぶん)。

【第2幕 第5場 こうもりになった夫を妻が阻止できる場所】

仮面舞踏会。「仮面」というより「お面」をつけて登場する客たち。そのままの方が面白かったかも。取った途端にちょっとガッカリ。ベラは赤い衣裳に着替えている。

ほぉ、チャルダッシュはこうきましたか(オペレッタでは、主人公アイゼンシュタインの妻ロザリンデがハンガリーの伯爵夫人と称して仮面舞踏会に登場、その証拠にチャルダッシュを歌う)。
依然としてゴージャス美女が自分の妻とは気づかないヨハンは、とうとう客たちと騒ぎを起こし警察に捕まってしまう。

ここで再び、こうもりの羽根をつけてフライング。飛んでいる相手とのパ・ド・ドゥは結構たいへんそう。

【第2幕 第6場 ああ! 女たらしの人生は一瞬たりとも安心できない!】

檻の中のヨハン。口パクで歌が入る。樋口達哉のテノール。甘く軽やかで素敵。でも、どこで歌っていたのかしらん?

続いて、ヨハンとベラの愛のパ・ド・ドゥ。肌色レオタードに肌色タイツのベラ。しかも、サイズが緩いのか、たまに皺が寄る(をいをい)。この衣裳、たぶん「素のままの自分」を象徴しているのだと思うが、 妙にエロエロ。

最後に切り落とされるこうもりの羽根。

【第2幕 第7場 スリッパは夫婦の幸せの象徴】

平穏な生活、再び。いつもと同じ青いドレスに赤毛のベラ。でも、今では彼女も知っている。自分が魅力的な女性であることを、そして、夫が自分を愛していることを。

ってことで、さぁ、ワルツを踊りましょう!

とにかく、舞台装置が秀逸。シンプルでありながら、実に表情豊か。衣裳もと〜ってもお洒落(ま、似合っていない人も若干いたが……)。
観ている間は何度も笑ったし、かなり面白い作品だとも思うけど、こうして冷静に思い返してみると、イマイチ物足りないような気もしないでもない。コール・ドの存在が舞台装置に負けていたからか?

【補足】

●オペレッタ『こうもり』
数年前の仮面舞踏会。すっかり酔いつぶれたファルケ博士は、銀行家アイゼンシュタイによって、こうもりの扮装のまま街中に放置され、“こうもり博士”という有難くないニックネームをつけられてしまう。そこで、アイゼンシュタインに仕返しをしたいファルケ博士は、暇と金を持て余しているオルロフスキー公爵と組んで大掛かりな悪戯を計画、公爵邸で仮面舞踊会を開く。
その舞踏会で繰り広げられる一夜のバカ騒ぎをシュトラウスの音楽が見事に盛り上げ、最後は、「すべてがファルケ博士と公爵による悪戯」と判明し、大笑いのうちに幕となる。

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