« レニングラード国立バレエ『ロミオとジュリエット』 | トップページ | 一月公演『おはつ』 »

2004年1月12日 (月)

寿初春大歌舞伎 夜の部

2004年1月12日(月)&24日(土) 歌舞伎座

売店では、いつもの最中アイス、きんつば、人形焼きなどの他に、紅白のお餅入りタイ焼きを販売。普段はアイスを食べるのだが、せっかくなので、こちらを買ってみた。すんごい美味しいってわけでもないけど(笑)、これから行かれる方はお試しあれ。

『鎌倉三代記 −絹川村閑居の場−』

安達藤三郎 実は 佐々木四郎左衛門高綱:松本幸四郎
三浦之助義村:尾上菊五郎
藤三郎女房 おくる:中村東蔵
阿波の局:大谷友右衛門
讃岐の局:市村家橘
富田六郎:中村歌六
母 長門:澤村田之助
北条娘時姫:中村雀右衛門

全十段の人形浄瑠璃で、《絹川村閑居の場》は七段目にあたる。作者はハッキリしていないが、近松半二という説が有力。大阪夏の陣を題材とした作品で、佐々木高綱は真田幸村、三浦之助は木村長門守、時姫は千姫を暗示している。

時姫は“歌舞伎三姫”のうちのひとつで(残りふたつは、『祇園祭礼信仰記』の雪姫と『本朝廿四孝』の八重垣姫)、美しさや気品と共に、恋人のためなら父を殺すのも厭わないほどの激しい情熱を持ち合わせている。さらに、冒頭では、赤姫姿に姉さんかぶりという不釣り合いな姿で恋人の母親を世話する甲斐甲斐しさも見せる。

京の源頼家と鎌倉の北条時政との合戦が続く中、京方の三浦之助は、母・長門が閑居する絹川村へ深手を負って現れる。必死に介抱する許嫁の時姫は、時政の娘でありながら、病床の姑に仕えている。

今生の別れに一目会いたいと願う三浦之助を追い返す気丈な母。自らの心得違いを詫び、再び戦場へ向かおうとする三浦之助を止めて、時姫のクドキとなる。

時姫の雀右衛門がとにかく素晴らしい。存在そのものが持つ説得力。運命に弄ばれるヒロインの悲劇性が、侘住居で右往左往する姿によく出ている。

三浦之助の菊五郎、柔らかく、かつ、凛々しい若武者。まさに円熟。
藤三郎ではそれなりに軽妙な味を出していた幸四郎だが、高綱になってからは何を言っているのか全然わからない。口跡悪すぎ。

葵太夫の浄瑠璃も舞台を大いに盛り上げる。

『京鹿子娘二人道成寺』道行より鐘入まで

白拍子花子:坂東玉三郎
白拍子花子:尾上菊之助

今月の歌舞伎座はこれに尽きる。長唄囃子連中も今までで一番よかったかも。

女方舞踊の代表的な演目である『京鹿子娘道成寺』を、女方ふたりで踊るのが『二人道成寺』。菊之助が花道、玉三郎がスッポンから登場する道行から、手踊り、鞠唄、花笠踊り、手拭いを使ってのクドキ、羯鼓、鈴太鼓、鐘入りまでを、ふたりの女方が交替で、あるいは連舞で踊る贅沢さ。

今回は新演出らしく、普通に同じ振りを踊るだけでなく、微妙にずらしてみたり、対照的になってみたり(鏡に写る虚実の像)と、様々な工夫が凝らされていて実に楽しい。

成熟した女の色気を感じさせる玉三郎と、生娘のような初々しい可憐さを漂わせる菊之助。顔を見合わせる瞬間など、このふたりが恋人同士かと錯覚してしまうほど。いや、もう、そこに流れる濃密な時間をたっぷりと堪能させていただきました。

それにしても、菊之助は巧くなったなぁ。初めてひとりで踊った浅草歌舞伎を思い出してしまったよ。

『花街模様薊色縫 十六夜清心』

扇屋抱え 十六夜:中村時蔵
極楽寺所化 清心:市川新之助
寺小姓 恋塚求女:中村梅枝
船頭三次:市川右之助
俳諧師百蓮 実は 大寺正兵衛:尾上松助

安政六年、河竹黙阿弥が実話を基に書いた四幕の世話物で、《十六夜清心》の通称で知られる。

鎌倉極楽寺の所化・清心は、扇屋抱えの遊女・十六夜と深い仲であることが知れ、寺を追われてしまう。そのことを聞いた十六夜も郭を抜け出し、ふたりは稲瀬川の川端で再会。十六夜が自分の子を宿していることを知らされた清心は心中を決意し、ふたりは手に手を取って稲瀬川に身を投げるが……。

清心の新之助、本領発揮までが長い長い。こういう役はまだまだね。見た目はキレイなだけに哀れさが出ないし、水から上がってからの滑稽さもイマイチ。さらに、求女を介抱する心の動きも明瞭さに欠ける。

ンが、「しかし待てよ」と、悪の世界に入ることを決意するセリフは最高! 変心が実に鮮やかで、うっとり〜。そこと、あの大きな眼をグリグリ動かしての花道の引っ込みだけをエンドレスで観ていたい(笑)。

十六夜の時蔵、遊女にしてはいささか淡白。もうひと刷毛、色気が欲しい。
百蓮の松助、声に工夫も見られたが、こういう役にはやはり物足りない。
意外とよかったのが、求女の梅枝。若いのにとても丁寧に演じていて、印象に残る。

新之助としての歌舞伎はこれが最後。次に会う時は、海老蔵なのね……。

|

« レニングラード国立バレエ『ロミオとジュリエット』 | トップページ | 一月公演『おはつ』 »

2004年鑑賞記録」カテゴリの記事