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2004年4月29日 (木)

マラーホフの贈り物

◆プログラムA
2004年4月29日(木) 東京文化会館

直前に出演者の変更があった割には、そこそこ満足できたプログラムだった。そう思えた一番の要因は、デズモンド・リチャードソン、サンドラ・ブラウン、アンドレイ・メルクーリエフら代役の存在だろう。怪我による出演キャンセルはよくある話だが、主催者側の対応によって、その後の観客の印象も大きく変わってくる。そのあたり、代わりのダンサーの人選といい、その後のフォローといい(ロビーに診断書のコピーを張り出したり、会場でマラーホフのコメントを配ったり)、NBSはまずまずではないかしらん。音楽は特別録音によるテープを使用。

【第1部】

『シンデレラ』よりアダージオ
[振付]ウラジーミル・マラーホフ [音楽]セルゲイ・プロコフィエフ

ポリーナ・セミオノワ、ウラジーミル・マラーホフ

満天の星空をバックに踊るセミオノワ。伸びやかな肢体と可愛いお顔。絵に書いたようなバレリーナ。マラーホフと見つめ合うシーンには情感も漂う。いい雰囲気だ。ただ、身長のバランスはイマイチ?
マラーホフ自身による振付。特筆するほどの個性は、まだない。

『ラクリモーサ』
[振付]エドワード・スターリー [音楽]ヴォルフガング・A・モーツァルト

ライナー・クレンシュテッター

海老? すみません、海老蔵襲名を前に敏感になっています(笑)。巧く説明できないけど、俯せの状態で逆立ちした感じ。『若者と死』にも似たようなポーズがある。

身につけているのはベージュの短パンのみ。細身だが筋肉はキレイ。テクニックもあるし、身体も柔らかい。ンが、それなりに見入ってしまうのは音楽の力(モーツァルト『レクイエム』)によるところが大きいような。

『ロメオとジュリエット』より“バルコニーのパ・ド・ドゥ”
[振付]レオニード・ラヴロフスキー [音楽]セルゲイ・プロコフィエフ

ディアナ・ヴィシニョーワ、アンドレイ・メルクーリエフ

簡素なバルコニーのセットあり。
あぁ、もう、何て官能的なんだ、ヴィシニョーワ。ロメオとジュリエットの物語は完全にどっか行ってしまっているよ。なんつーか、有閑マダムと若いツバメ、って感じ(をいをい)。「そろそろ旦那が帰ってくるから……」ってな感じで、短い逢瀬はThe End。

メルクーリエフの驚くほど軽い跳躍に、思わず胸がときめく。

『アヴェ・マリア』
[振付]ドワイト・ローデン [音楽]ジュリオ・カッチーニ

サンドラ・ブラウン、デズモンド・リチャードソン

黒いビキニ(ブラウン)と黒い短パン(リチャードソン)の上に赤い布ヒラヒラ。
絶え間なく動き続ける肉体。絡み合い、縺れ合い、ほどけては、また絡む。第2ポジションでのプリエ、しかもポアント(この説明でいいのだろうか?)でも微動だにしないブラウン。ふたりとも、高い身体能力と完璧なコントロールが目を引く。面白いっ!

『白鳥の湖』より“黒鳥のパ・ド・ドゥ”
[振付]マリウス・プティパ [音楽]ピョートル・I・チャイコフスキー

ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・ウヴァーロフ

昨年の世界バレエフェスティバルに比べると、少しパワーに欠ける? いや、もしかしたら、前のペアから巧く気持ちの切り替えができなかったこちらのせいかも。

何となくウヴァーロフが重たげというか、キレがないというか……。う〜む、調子悪い? でも、脚を打ち付ける音は上の階までビシビシ響いてくる。ステパネンコの緩急つけたフェッテは相変わらず素晴らしい。

【第2部】

『バレエ・インペリアル』
[振付]ジョージ・バランシーン [音楽]ピョートル・I・チャイコフスキー

ディアナ・ヴィシニョーワ、ウラジーミル・マラーホフ
コリーヌ・ヴェルデイユ
木村和夫、後藤晴雄、東京バレエ団

白い衣裳。ヴェルデイユだけピンク。
バランシンの振付は「音楽の視覚化」と言われるが、ある意味、「スコアの視覚化」って気もする。人がたくさん登場する場面は、スコアも真っ黒なんだろうなぁ、などと思ってみたり。ほどほど上から眺めてみると、コール・ドのフォーメーションが確認できて面白い。

音楽との調和と物語性の排除。強靭なテクニックを前面に打ち出し、濃い芝居を押さえる。こういう作品だと、ヴィシニョーワとマラーホフがお互いを“最高のパートナー”と呼ぶのも納得できるような。

ヴェルデイユ、木村、後藤のパートは、後藤ひとりが音に遅れていて何とも忙しない。ンで、そのヴェルデイユだが、妙にコール・ドと馴染んでいる。いいのか、それで?

ンで、そのコール・ドだが、こちらは、それなりに頑張っていたのではないかしらん。少なくとも、第2ソリストの武田明子と小出領子はよかった。ただ、やはり全体的には緻密さに欠けるような。いや、バランシン作品はそんなに観ていないので、よくわからないけど(をいをい)。

それにしても、コール・ドのダンサー、顔と名前がまだまだ一致しない(泣)。その中で、最近ようやく判別がつくようになった古川和則、時々、爪先が伸びていなくて残念。

【第3部】

『ライモンダ』よりパ・ド・ドゥ
[振付]マリウス・プティパ [音楽]アレクサンドル・グラズノフ

ガリーナ・ステパネンコ、アンドレイ・ウヴァーロフ

今回もウヴァーロフはマントなし。プログラムの写真はマントありなので、期待していたンだが……。

ふたりとも“黒鳥のパ・ド・ドゥ”よりこっちの方がいいなぁ。特に、ウヴァーロフ。うん、ダイナミックだ。まさに、頼りになるパートナーって感じ。しっかし、本当にデカくて脚が長い。

『ソロ』
[振付]ドワイト・ローデン [音楽]プリンス

デズモンド・リチャードソン

こちらも赤い短パンに布ヒラヒラ。美しい筋肉に見惚れる。一瞬にして劇場の空気を変えることができる才能は、ガラ公演では絶対必要だ。

こういう身体を目にすると、日本人のそれが“厚み”と“充足感”に欠けることを改めて実感する。いや、ホント、厚いだけじゃなくて、みっちり詰まっている感じがするものなぁ。

『眠れる森の美女』よりパ・ド・ドゥ
[振付]マリウス・プティパ [音楽]ピョートル・I・チャイコフスキー

ポリーナ・セミオノワ、アンドレイ・メルクーリエフ

すでに主役オーラを放ち始めたセミオノワ。去年より、テクニックも表現力も数段よくなっている。そこはかとない貫禄さえ感じられるよ。

メルクーリエフも爽やかな王子でいいわ。でも、その髪型はないよな。オールバックは老けて見えるから止めましょう。

『海賊』より“奴隷のパ・ド・ドゥ”
[振付]マリウス・プティパ [音楽]リッカルド・ドリゴ

コリーヌ・ヴェルデイユ、ライナー・クレンシュテッター

ふたりともテクニックはあるし、精確な踊りには好感を持つが、いささか地味。順番が悪かったのか? それとも、“奴隷のパ・ド・ドゥ”を選んだのが悪かったのか?

クレンシュテッターは少し顔が長いような。何かスタイルがとても悪く見える。ソロの時は気にならなかったンだけどね(照明が暗かったから?)。ってゆうか、それより何より奴隷商人に見えないわ。

『ヴォヤージュ』
[振付]レナート・ツァネラ [音楽]ヴォルフガング・A・モーツァルト

ウラジーミル・マラーホフ

どんなに短い作品の中にも、鮮やかにドラマを描き出すマラーホフ。暖かなユーモアを漂わせながら、生きることの悲哀を感じさせる。

何度目かのカーテンコールでは華麗な跳躍を披露しながら登場。相変わらず、着地音はまったくしない。

【フィナーレ】

音楽はエドワード・エルガーの行進曲『威風堂々』第1番。
ヴェルデイユ&クレンシュテッター、セミオノワ&メルクーリエフ、ブラウン&リチャードソン、ステパネンコ&ウヴァーロフ、ヴィシニョーワ、マラーホフの順に全員が登場。総勢10名。意外と少なかったのね。

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