« 十一代目市川海老蔵襲名披露 五月大歌舞伎 昼の部 | トップページ | マラーホフの贈り物 »

2004年5月 1日 (土)

十一代目市川海老蔵襲名披露 五月大歌舞伎 夜の部

2004年5月1日(土)&20日(木) 歌舞伎座

筋書に寄せた永山武臣松竹会長の言葉によると、團十郎と海老蔵、このふたつの名前が看板に並ぶのは幕末以来のことで、実に百五十年ぶりだそうな。それも、團十郎の病気休演のため、たった九日間で終わってしまったことを考えると、何とも切ないものを感じる。と同時に、急な代役を見事に勤めた三津五郎に、心から感謝の気持ちを捧げたい。

『碁太平記白石噺 −新吉原揚屋の場−』

傾城宮城野:中村時蔵(雀右衛門体調不十分のため代役)
宮城野妹 信夫:尾上菊之助
大黒屋 惣六:中村富十郎

由井正雪の乱(三代将軍家光の死に乗じて浪人を集めて倒幕を企てるも、事前に露見し失敗)と奥州白石であった姉妹の仇討を仕組んだ全十一段の長編だが、現在は七段目の《揚屋》が上演されるのみ。

父の敵を討つために奥州から江戸に出てきた信夫は、廓の主人・惣六に助けられ、連れて来られた大黒屋で幼い頃に別れた姉の宮城野に再会する。全盛を極める花魁と奥州訛の田舎娘という対照的な姉妹が、再会を喜び、父の死を嘆き、敵討の決意を固めるまでを描いた一幕。

宮城野の時蔵、代役とは思えないほどの出来。今月は、昼夜共にいい。
信夫の菊之助、利発そうなところはいい。ンが、田舎娘には見えないのよ。

血気に逸る姉妹を、曽我兄弟の敵討話になぞらえ、時節を待つよう諭す惣六に富十郎。侠気に富んだ惣六はピッタリなンだけど、昼の部同様、プロンプ付き(をいをい)。20日に観た時は、さすがにセリフも入っていたような。

『十一代目市川海老蔵襲名披露 口上』

市川新之助 改め 海老蔵
   ○
中村雀右衛門
中村芝翫
中村富十郎
尾上菊五郎
中村梅玉
市川團十郎

いよいよ口上。柝が入り、客席の緊張も一気に高まる。

幕が開くと、ずらりと並んだ幹部俳優たち。他の演目は休演した雀右衛門も、この幕だけは出ている。海老蔵を中心に、上手に向かって雀右衛門、菊五郎、彦三郎、三津五郎、松緑、芝雀、段四郎、芝翫、下手に向かって團十郎、梅玉、魁春、友右衛門、菊之助、権十郎、時蔵、左團次、富十郎。後見は男寅。

柿色に三升の紋の裃、まさかり髷の新海老蔵が目の前にいる。今回は最前列中央という超良席に恵まれたものだから、まさに眼福。ありがとうー!>番頭さん

誰の挨拶の時だったろうか。ふと気がつくと、海老蔵が泣いている。俯きながら、そっと目頭を押さえているのだ。それを目にした瞬間、思いっきり舞い上がってしまったワタクシ。彼の来し方行く末を思い、こちらまで泣きそうになる。もう、そこから先は記憶が曖昧。最後に海老蔵のにらみがあったのだが、よく覚えていない。意外と迫力なかった気もするンだけど、緊張していたのかしらん?

『勧進帳』

富樫左衛門:市川新之助 改め 海老蔵
源義経:尾上菊五郎
亀井六郎:市川團蔵
片岡八郎:尾上松助
駿河次郎:片岡市蔵
常陸坊海尊:片岡芦燕
武蔵坊弁慶:市川團十郎

夜の部の襲名披露狂言は『勧進帳』。歌舞伎十八番の中で最も上演回数の多い人気作。新之助と出会ったのも『勧進帳』だし、おまけに、團十郎と海老蔵が本作で共演するのは「嘉永五年以来百五十二年ぶり」とのことで、こちらも気合が入る。

ンが、一番気合入っていたのは團十郎でした。泣いてます。花道の出から鼻水垂れてます。いや、なんつーか、すんごい舞台を見せてもらいました。山伏問答がどうとか、判官御手がどうとか、延年の舞がどうとか、もう関係ないっす。最初から最後まで、ただただ團十郎の気迫に圧倒された『勧進帳』でした(今にして思えば、為所も多く体力のいる弁慶は、病身にはかなり応えただろうに……)。

武蔵坊弁慶:坂東三津五郎(團十郎病気休演のため代役)

三津五郎の弁慶。その風格、その落ち着き。小柄な身体が大きく見える。スッキリとした口跡と端正な演技、そして、延年の舞の面白さ。急な代役とは思えないほど立派な弁慶だ。

いやいやいやいや、こんなお手本のような弁慶と対峙すると、海老蔵の未熟さが際立つなぁ(苦笑)。前より口跡が悪くなっているような気がするぞ。ってゆうか、團十郎も口跡悪いから、親子で舞台に立っていると何が正しいンだか、正直、わからなくなるのよね。なんつーか、カオスに投げ込まれたような感じ? だから、もしかすると、以前からこんな状態だったのかも知れない。
頼むから、口跡に関しては父を見習わないでくれー!>海老蔵

最後、幕外の飛び六方で客席が手拍子している。手拍子? それって、ありなのか?

『新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎』

魚屋宗五郎:坂東三津五郎
小奴 三吉:尾上松緑
磯部召使 おなぎ:尾上菊之助
宗五郎 女房おはま:中村芝雀
磯部主計之助:市川新之助 改め 海老蔵
家老 浦戸十左衛門:坂東彦三郎

河竹黙阿弥が、五代目菊五郎から生世話の酒乱の役をやりたいとの頼みを受け、怪談皿屋敷を下敷きに書いた世話物の名作。今回は、三津五郎はじめ、芝雀、松緑、菊之助、海老蔵という新鮮な顔合わせ。

魚屋宗五郎は、磯部主計之助の屋敷に妾奉公に出た妹のお蔦が、濡れ衣を着せられ殺されたことを、屋敷の召使おなぎから知らされる。酒乱のために禁酒していた宗五郎だが、怒りのあまり酒に手をつけ、酔った勢いで磯部の屋敷に暴れ込む……。

宗五郎の三津五郎、前半の分別をわきまえた人物像の見せ方、後半の酒を飲んで次第に人柄が変わっていく過程、共に巧い。後は、ここに男の色気や悲哀が滲み出てくるようになれば言うことなし……と思っていたら、20日に観た時はかなりよくなっていた。「親父も笑や、こいつも笑い、わっちも笑って暮らしやした」のセリフが泣けた泣けた。

おはまの芝雀、最高! 世話物の女房がこんなに似合うとは思っていなかった。この路線いいかも。頑張って下さい。

三吉の松緑、何とも今っぽい。彼がひとりで芝居を壊しているような気がする。
そして、海老蔵が磯部主計之助で襲名披露の一日を締めくくる。清々しい殿様に、思わず惚れ惚れ〜。

それにしても、日本語の再確認という意味でも、世話物の存在って貴重よね。

|

« 十一代目市川海老蔵襲名披露 五月大歌舞伎 昼の部 | トップページ | マラーホフの贈り物 »

2004年鑑賞記録」カテゴリの記事