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2004年9月 4日 (土)

東京バレエ団創立40周年記念公演『ドン・キホーテ』

2004年9月4日(土) 東京文化会館

[原作]ミゲル・デ・セルバンテス [原演出・振付]マリウス・プティパ
[改訂演出・振付]アレクサンドル・ゴールスキー、ロスチスラフ・ザハーロワ
[新演出・振付]ウラジーミル・ワシーリエフ
[音楽]レオン・ミンクス、アントン・シモーヌ、ヴァレリー・ジェロビンスキー、他
[指揮]アレクサンドル・ソトニコフ [演奏]東京フィルハーモニー交響楽団
[ハープ]ナターリヤ・シャメーワ

今回は席に泣かされた。前方で段差がないうえ、ガタイのいい女性ふたりに視界を遮られ、かなりストレス。こちらの気持ちがネガティブになっているせいか、間近に感じられるダンサーの表情や息遣いを楽しむよりも、粗ばかり気になってしまった。ドラマが希薄に感じられたのも、たぶん、こちらの問題でしょう。やはり、あまりにも前の席は考えものね。ま、キャンセル待ちで取れたチケットだから、文句は言えないけど。
いつも楽しみにしている脇役チェックもあまりできなかったわ。わかったのは、何気に市民や貴族に混じっていた木村和夫ぐらいか。

キトリ/ドゥルシネア:上野水香
バジル:高岸直樹
ドン・キホーテ:芝岡紀斗
サンチョ・パンサ:飯田宗孝
ガマーシュ:古川和則
メルセデス:井脇幸江
エスパーダ:後藤晴雄
ロレンツォ:窪田央

キトリの友人:佐野志織、小出領子
闘牛士:後藤和雄、大嶋正樹、平野玲、野辺誠治、中島周、辰巳一政、横内国弘、長瀬直義
若いジプシーの娘:吉岡美佳
ドリアードの女王:遠藤千春
3人のドリアード:大島由賀子、乾友子、奈良春夏
4人のドリアード:武田明子、門西雅美、加藤文、長谷川智佳子
キューピッド:高村順子

ヴァリエーション1:佐野志織
ヴァリエーション2:小出領子

【プロローグ〜第1幕】

スペインの港町を舞台に繰り広げられる、キトリをめぐる恋の騒動とドン・キホーテの冒険!

東京バレエ団の『ドン・キホーテ』は、2001年初演の際、「ウラジーミル・ワシーリエフの全面的な協力を取りつけ」て制作された独自のヴァージョン。正統なプティパ/ゴールスキー版を、さらに現代的な感覚で見直しているそうな。確かにスピーディーな展開にはなっているが、それでも、1時間15分もある第1幕は、正直、「まだ終わらないの?」と、思ってしまったよ。バランス悪くない?

キトリの上野水香、勝気さも色気も品も腹八分な感じだが、長身で手足も長く、そこはかとなくおっとりした(あくまでも、こちらの勝手なイメージ)彼女にしては、なかなかよくやっていたような。メークもすっきりしていて可愛かった。ただ、薄過ぎる気がしないでもない。遠くの客席では、どう見えたのかしらん?

あとは、もうちょっと自然な演技が身につくといいと思われ。マイムにしても、教えられたことを再現しているようにしか見えないし、まだまだ腕や顔の表情も乏しい。所々見受けられる妙なアクセント(以前から気になっていたが、最近、さらに顕著になっている)も、あざといので止めましょう。

バジルの高岸直樹、固く真直ぐな精神性はこの人の持ち味なのね。だから、若者をやらせると、こうまでハマるのか。納得。ンが、さすがに2日連投(前日はエスパーダを踊ったそうな)は厳しかったのでは? 長身の上野をあそこまで高々と掲げられるダンサーは他にいないだろうが、ハラハラするほど揺れていたし、フィッシュダイブも危うかった。

でも、そういうテクニック的なことよりも、ふたりの間に恋愛感情が希薄なのが気になる。キトリとバジルって、恋人同士よね? と、改めて、誰かに問い質したくなってしまったよ。

そのあたり、メルセデスの井脇幸江とエスパーダの後藤晴雄はよかった。今までこのふたりが並ぶと、姐さんと若い衆って感じだったのが、今回、後藤兄は若頭ぐらいに出世していた(笑)。ってゆうか、ちゃんと恋愛関係を築いておりました。立派立派。踊りはキレキレなのに、ムレタの扱いがイマイチなのはご愛嬌?

ところで、この4人の関係って、お友達? 遊び仲間? 何かよくわからないのよね。

エスパーダと一緒に踊る闘牛士たち、帽子の飾りが顔の前にぶら下がるのが鬱陶しい。それより何より、全員のレベルは揃えようよ。踊れていない人がいるぞ。

ガマーシュの古川和則、ベタだけど愛嬌があって、踊るとキレイ。メリハリある役作りが光っていた。

ジプシー娘の吉岡美佳、確かに、悲愴感漂う完全にイッちゃっている踊りは迫力あるが、もっと穢れを感じさせて欲しい。

ドリアードの女王の遠藤千春、まったりとした踊りに、しばし癒される。夢としての儚さと女王としての存在感。女王系はダメだと思っていたが、これはよかった。ただ、一緒に踊る相手を意識したのか、いつもよりちょっぴり高く脚を上げていたような(笑)。

ってことで、ドゥルシネアの上野水香。衣裳が変わっただけで、踊りも雰囲気もキトリとあまり変わらない。自分がドン・キホーテの夢の中に存在する“麗しの姫君”ということをわかっている?

サンチョ・パンサの飯田宗孝が好演。

【第2幕】

狂言自殺の流れがイマイチよくわからない。何か、いつの間にか結婚を許されていたような。あ、でも、これはこちらの問題か。何せ、見えない部分が多く、記憶で補いながら観ていたので(泣)。

ってことで、結婚式。
佐野志織と小出領子(1幕ではキトリの友人、2幕ではヴァリエーション)が共に好演。ここ最近、小出はグングン輝きを増している。ただ、ペース配分が悪くて、後半バテ気味。先輩を見習ってね。ついでに言えば、ジュテの着地も。佐野はかなり高く飛んでいるのに、着地の音がまったくしないのだ。

さすがに、大柄カップルのグラン・パ・ド・ドゥは華やかだわ〜。でも、ふたりともマイペースっていうか、恋人同士の愛情の交感がないのよね。頼むから、もっとラヴラヴ(はあと)な雰囲気を醸し出してくれー!

ここでも、リフトやフィッシュダイブにハラハラドキドキ。特に、フィッシュダイブはマヂでヤバいと思ったわ。何とか持ち堪えてよかったね〜。
あと、扇子はもっと粋に扱いましょう。>キトリ

全体的に“スペイン”が足りない。あの前のめりになりそうな3拍子の勢いとか、無駄に明るい祝祭感とか、もっともっと過剰でいいと思うぞ。
それと、タイトルロールの存在感があまりにも軽い。ダンサーの問題というよりは、構成や演出の問題か? 舞台の主役はキトリとバジルでも、物語の核はドン・キホーテでしょう。違うの?

カーテンコールは音楽&観客の手拍子と共に。すみません、手拍子嫌いなんです、私。あ、でも、よろしいンじゃないでしょうか、盛り上がって。

最後に、主催(たぶん)から上野水香に花束贈呈。う〜む、意味不明だわ。指揮者のアレクサンドル・ソトニコフやハープ奏者のナターリヤ・シャメーワ(ふたりとも、ブラボー!!!)ならわかるのよ、ゲストだから。あるいは、主催と出演がまったく別物ならね。でも、NBSと東京バレエ団は関連団体なわけで、何か内輪のジョーク聞かされているみたいで萎える。もし、上野の移籍後国内全幕主役デビューを祝いたいのであれば、幕内でやってくれ。ってゆうか、結局、バレエ団的にはゲスト扱いなのか?

別に、彼女の移籍や主役デビューを否定的に捉えているわけではありません、念のため。ただ単に、主催と出演の関係性が気になるだけ。ま、そういうことが気になるのは、私自身、舞台制作の仕事をしているせいなのかも。

しっかし、今回の公演プログラム、誤植多いっすね。会場でサクッと眺めただけでも、いくつか見つけたぞ。思わず、赤、入れそうになってしまったよ(笑)。

【補足】

●原作について
原作はミゲル・デ・セルバンテスの同名小説(前篇1605年、後篇1615年)。騎士道物語の読み過ぎで物語と現実の区別がつかなくなってしまった郷士が、自ら“ドン・キホーテ”を名乗り、農夫のサンチョ・パンサを従えて愛と冒険の旅に出る……。
スペイン文学の傑作であり、その形式(メタ・フィクション)は、後のヨーロッパ近代小説に大きな影響を与えた。文庫にして全六冊。とにかく、長い。
バレエの『ドン・キホーテ』は、後篇第20章《ここでは長者カマーチョの婚礼と貧者バシリオの冒険が語られる》と第21章《ここではひきつづきカマーチョの婚礼が、そのほかの楽しい出来事とともに語られる》に、有名な風車のエピソードを合わせたストーリーになっている。

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