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2004年12月21日 (火)

植物物語presents『ロミオとジュリエット』

2004年12月21日(火) 日生劇場

[作]ウィリアム・シェイクスピア [翻訳]松岡和子 [演出]蜷川幸雄

最近の舞台を見て、「あぁ、いい装置だな。これ誰だろう」とクレジットを確認すると、中越司だったりする。私がよく観る演出家と組んで仕事をすることが多いので必然的にそうなるだけかも知れないが、それでもやはり、毎回いい仕事をしていると思う。

今回も、まず、装置が目を引く。“愛に死んでいった若者たちの遺影”に囲まれた舞台。一見すると狭そうだが、三階建て(?)の構造になっていて、縦の空間を巧く利用している。特に、バルコニーのシーンにおける視覚的効果。上下する役者の動きが、一瞬たりともじっとしていられない恋する気持ちとダイレクトに繋がる。

ロミオ:藤原竜也
ジュリエット:鈴木杏
キャピュレット:壤晴彦
僧ロレンス:瑳川哲朗
キャピュレット夫人:立石凉子
乳母:梅沢昌代
薬屋、葬列の男:藤井びん
マキューシオ:高橋洋
モンタギュー:妹尾正文
モンタギュー夫人:スズキマリ
ティボルト:横田栄司
パリス:月川勇気
序詞役、パリス小姓:マメ山田

パトカーのサイレンが響く中、序詞役の口上。そして、一瞬の静寂の後、物語は始まる。

真夏のヴェローナに激しく燃え上がるロミオとジュリエットの恋。過酷な運命に翻弄される若いふたり……。『ロミオとジュリエット』は「喜劇として始まり悲劇として終わる芝居」である。悲劇の不可避性。今回はその悲劇性、もっと言えば、“死の影”がやたらと強調された演出だった。確かに、「生きては叶わぬ恋の悲しき顛末」という言葉どおり、ふたりの恋は死を運命づけられているわけだが、恋の歓喜を描く前半においては、死は密やかに感じさせる程度にしておいて欲しかった。

それはロミオの造型にも言えるわけで。日頃から恋にうつつを抜かし、傍から見るとどうかと思うような直情型の脳天気さを持つ若者、それがロミオのイメージなのに、藤原竜也は、「ハムレットですか?」とツッコミ入れたくなるぐらい深刻なのよ。最初から、「これはもう死ぬっきゃないよね〜」って感じ。今まで“入り込む役”が多かったから、ロミオのような若者、王子でもない、心に傷を負った人間でもない、ごくごく普通の男の子役は却って難しかったのかしらん?

ただ、バルコニーのシーンで観客に向かって話しかける演技などは、なかなか軽妙で面白かったし、決して、できないわけじゃないと思われ。

ジュリエットの鈴木杏、TVや映画で観るとチャーミングだが、まだまだ舞台の役者じゃないのよねぇ。とりあえず、表情はいい。ンが、身体の使い方がまったくダメ。ずっと猫背だから、肩から背中にかけて余計な力が入っているように見えて、全然美しくないー! それに、演技も単調。

特に、第2部。一夜を共にしたロミオがマンテュアに旅立ち、ひとり残されたジュリエットはパリスとの結婚を迫られる……それに続く嘆きのシーンなんて、メチャメチャ一本調子で退屈。あと、台詞も固い。四角四面。クリアに喋ってはいるが、こちらの胸には少しも響いてこない。でも、ま、17歳という年齢を考えれば、これでも健闘していた方かも知れない。

「う〜む、困ったなぁ……」という私のトホホな気分を救ってくれたのがマキューシオの高橋洋。これほど見事なマキューシオは初めて観たわ。恋を理想化し、一途にのめり込んでいくロミオに対し、大らかに性を茶化すマキューシオ。強烈な野生、止め処ないおしゃべり、そして、自分をぶち壊すように神様が造った男の危うさ。いやいやいやいや、素晴らしい! 彼は蜷川作品には欠かせない存在になったね。

乳母の梅沢昌代、明け透けな猥雑さを漂わせて好演。
衣裳がメチャメチャお洒落。特に、パンク入った両家の若者たち、かっちょええ〜。

【補足】

●バレエにおける『ロミオとジュリエット』
シェイクスピアの台詞はつくづく難しい。所謂、普通の台詞劇としての『ロミオとジュリエット』を観て、中途半端なテクニックで語られる言葉なら、バレエダンサーの身体表現の方がストレートに感情が伝わるということを、改めて実感させられた。言葉が大好きな私が、今回はその言葉に辟易させられてしまったような。

ってことで、世界的にも有名なバレエ作品をご紹介。

ミラノ・スカラ座バレエ団 [振付]ケネス・マクミラン

ロミオ:アンヘル・コレーラ
ジュリエット:アレッサンドラ・フェリ

フェリのジュリエットが絶品! まさに、踊る女優。


パリ・オペラ座バレエ [振付]ルドルフ・ヌレエフ

ロミオ:マニュエル・ルグリ
ジュリエット:モニク・ルディエール

ワタクシ的には、ティボルト役のシャルル・ジュドがツボ。

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