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2005年2月13日 (日)

東京バレエ団『ラ・シルフィード』

2005年2月13日(日) 東京文化会館

[振付]ピエール・ラコット(フィリッポ・タリオーニ原案による)
[台本]アドルフ・ヌーリ
[音楽]ジャン=マドレーヌ・シュナイツホーファー(第1幕パ・ド・トロワはモーレの『オンブル』より抜粋)
[美術]マリ=クレール・ミュッソン(ピエール・チチェリ版による)
[衣装]ミッシェル・フレネス(ウージェーヌ・ラミ版による)、桜井久美(日本版再デザイン)
[指揮]アレクサンドル・ソトニコフ [演奏]東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

昨年7月、《ルグリと輝ける仲間たち 2004》で初来日を果たしたマチュー・ガニオ。直前のエトワール任命(それも飛び級で)もあって、期待値メチャメチャ高かった割には、「う〜む」な印象。それから約半年、マニュエル・ルグリ先生引率のもと、今度は日本全幕主役デビューとなったわけだが……。

シルフィード:斎藤友佳理
ジェイムズ:マチュー・ガニオ
エフィー:井脇幸江
ガーン:森田雅順
マッジ:木村和夫
アンナ:加茂律子
パ・ド・ドゥ:長谷川智佳子、大嶋正樹

シルフィード(ソリスト):大島由賀子、高木綾、奈良春夏

【第1幕】

序曲が終わって幕が上がると、アームチェアで微睡むジェイムズがいる。美しい。美し過ぎる。この世の者とは思えない。ホント、最初は人形かと思ったよ。陶器のように滑らかな肌、完璧なラインを描く高い鼻梁。「あぁ、もっとよく観たいっ!」と、オペラグラスを覗いた瞬間、流し目をする斎藤友佳理の姿が……。流し目はやめろ、流し目は!(怒)

もともと彼女の芸風(悲劇を体現しているような、あるいは、じっとりとした情を含んでいるような)が苦手だったが、あの流し目を観てしまったら、もうダメ。「優しさと悪戯心のまざった眼差し」って、どこがじゃー! 熟女の媚びにしか見えんぞ、こらぁ! ……す、すみません、暴走してしました。

確かに踊りは巧いし、若いエトワールが相手でも、終始、安定していたよ。ンが、醸し出す空気はどこまでもどこまでも重たいような。そうですか、そう思うのは私だけですか。

ってことで、ほとんどジェイムズばかり観ておりました。
マチュー・ガニオは、立つとさらに美しいの。まず、背が高い。そして、顔が小さい。おまけに、赤いタータンチェックのキルトから伸びる脚の、何と長く真直ぐなこと! もちろん、手も長く、指もほっそりしている。惜しむらくは姿勢。前回も猫背気味だったが、そのあたりがまだちょっと気になる。

踊りに関して言えば、正直、不安定だった。「をを!」と思うと、「へ?」となったり。ただ、そういう振幅の大きさも、ジェイムズのような優柔不断なお坊っちゃんには似合っていたような。ってゆうか、もう何でもいいンだ、美しいから(笑)。

エフィーに井脇幸江。彼女はホントに役柄の幅が広い。今回も清純な若い娘を的確に表現する。あぁ、でも、さすがに相手が悪かった。マチューの横に並ぶと、深く刻まれた口角の皺が気になる気になる(どうして、そういう表面的な見方しかできないのよ?>ぢぶん)。

マッジの木村和夫、長い指に禍々しさが宿る。ところで、マッジって男? それとも、女? 魔法使いだから性を超越した存在なのかも知れないが、今回は完璧に“男”を感じたぞ。

パ・ド・ドゥの大嶋正樹、踊りは素晴らしく軽快なのに、衣裳がじぇんじぇん似合っていない。顔の大きさばかり目立って、気の毒なほど。

“オンブル”と呼ばれるパ・ド・トロワ。虚(シルフィード=霊的世界)と実(エフィー=現実世界)の間で揺れ動くジェイムズの心象風景を具現化。周囲の動きが止まり、3人の関係性だけがくっきりと浮かび上がる。中でも、「抱き合うジェイムズとエフィー、その上に漂うシルフィード」というポーズは、視覚的なインパクトが抜群で、忘れ難い美しさ。

でもね、この日のキャストなら、どう考えてもエフィーの方を選ぶと思うのよね(をいをい)。

【第2幕】

2幕は、魔法使いと魔女たち(やはり女なのか?)による呪いの踊りで幕を開ける。
木村和夫がすんごい迫力。あまりのかっちょよさに、「魔法使いとして如何なものか?」って気もしないでもないが、とりあえず、これぐらい外見を作り込んだ役の方が、この人の大仰さは生きるような。

場面変わって、霧深い森の中をシルフィードたちが飛び回る。をを! ホントに飛んでいるよ。う〜む、フライングが珍しかった時代ならともかく、今の世の中、却って安っぽくないか?

それはともかく、ここは踊る踊る〜。アダージオ、最初のヴァリアシオン、2番目のヴァリアシオン、そしてコーダと、畳み掛けるように見せ場が続く。

細かい脚技や跳躍、回転の連続で、疲労度もピークのマチュー・ガニオ。途中、ヘロったりしながらも、最後はきちんと帳尻合わせていたような。ただ、ちょっと収まり悪いかな。フォルムが完璧じゃない、ってゆうか、ここぞと思うポイントにスッと収まる快感が足りないのよね……とか何とか言っていても、レヴェランスの笑顔を目にすると、「あなたが微笑んでくれるなら、いくらでも拍手するわ〜」って気分になるンだな、これが(アホか?>ぢぶん)。

3人のシルフィードの大島由賀子が印象に残る。

続く死の場面。マッジから貰った魔法のヴェールで、そっとシルフィードを包み込むジェイムズ。すると、背中の羽根が1枚、また1枚と落ちていき、シルフィードは息絶える。仲間たちの手で空高く運ばれていくシルフィード(ここで再びフライング)。森の彼方には、皆に祝福されながら旅に出るエフィーとガーン。すべてを失った絶望から、その場に崩れ落ちるジェイムズ……って、しょうもない男やな、コイツ。でも、そのしょうもなさがマチューの美貌にピッタリ〜。

いや、もう、ホントにマチューしか観ていなかったわ。今はまだ踊りも完璧ではないし、物語を紡ぐ力もそれほど強いとは言えない。でも、目が離せない。あはっ、完全にやられちゃいました。あぁ、こうしてさらなる深みにハマっていくのね……。

最後に、これは本当に勝手な願望だが、なんつーか、ワイルドというか、サヴィッジというか、とにかく、そんな役柄を踊る彼を観てみたい。あの美貌が、壮絶なまでの凄みを生み出しそうな気がするのよ。

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