« シアターコクーン・オンレパトリー2005『メディア』 | トップページ | 十八代目中村勘三郎襲名披露 五月大歌舞伎 夜の部 »

2005年5月24日 (火)

十八代目中村勘三郎襲名披露 五月大歌舞伎 昼の部

2005年5月24日(火) 歌舞伎座

先月に引き続き、十八代目中村勘三郎襲名披露興行。そう言えば、先代の勘三郎がテレビ朝日『土曜ワイド劇場』で演じていた中村雅楽シリーズ(原作は戸板康二の小説)って、結構、好きだったのよね。近藤正臣とか山城新伍が出ていて、確か、シリーズ第1作は娘の波野久里子が犯人役だったような……って、昔話はさておき、昼の部は2階最前列のロイヤルシート。花道は少し見切れるけど、さすがに観やすいわ〜。

『菅原伝授手習鑑 車引』

舎人 梅王丸:中村勘太郎
同  桜丸:中村七之助
同  杉王丸:中村鶴松
同  松王丸:市川海老蔵
藤原時平公:市川左團次

延享三年に竹田出雲、並木千柳、三好松洛、竹田小出雲が合作した人形浄瑠璃『菅原伝授手習鑑』の三段目。

梅の花が薫る吉田神社の社頭。藤原時平一行の行く手を遮る菅原道真の舎人梅王丸と皇弟・斎世親王の舎人桜丸。そして、そのふたりの前に立ちはだかる時平の舎人松王丸。梅王丸、桜丸、松王丸は三つ子の兄弟でありながら、敵味方にわかれて争う。

歌舞伎らしい様式美に溢れた一幕。梅王丸に勘太郎、桜丸に七之助、松王丸に海老蔵という若々しい布陣で、両花道を使った出からワクワクする。

松王丸の海老蔵がさすがにデカい。見得のひとつひとつに迫力があり、観る者を圧倒するほどの立派さ。意外に健闘していたのが、梅王丸の勘太郎。激しい気性と力強さがよく出ていた。
松王丸が元禄見得、梅王丸が横見得、桜丸が和事の見得と、三者三様の見得を決める幕切れでは、三つ子の行く末を思い、不思議と涙が溢れてきた。演じる役者が若いからかしらん? その後の苦難が胸に迫る。

杉王丸に扮した清水大希改め中村鶴松が、まだ声変わりもしていない小さな子供なのに、苦しい姿勢をしっかり保ち、なかなかの頑張りを見せていた。

『芋掘長者』

芋掘藤五郎:坂東三津五郎
松ヶ枝家息女 緑御前:市川亀治郎
同   後室:坂東秀調
同   腰元 松葉:市村萬次郎
莵原左内:市川高麗蔵
魁兵馬:河原崎権十郎
友達 治六郎:中村橋之助

『身替座禅』や『棒しばり』の作者として知られる岡村柿紅作の舞踊劇。大正七年、市村座初演。「踊りの名手にわざと下手な踊りをさせる」という趣向が楽しい。歌舞伎座では四十五年ぶり、しかも、新たに振付し直しての復活上演だそうな。

息女・緑御前の婿選びのために舞の会を催す松ケ枝家。緑御前に恋い焦がれる芋掘の藤五郎は、舞上手の友人・治六郎と共に、素性を偽って屋敷に乗り込むが……。

藤五郎の三津五郎、日頃は“日舞マシーン”とまで言われる彼が、本作では踊れない役を演じる。そのあたりが、まず効いている。見様見真似で踊ってみせるが、次第に付いていけなくなる滑稽さ。それでいて、きちんと踊りになる巧さ。

治六郎の橋之助も舞の上手な友人役を好演。しっかし、おっさんになったな……と、思わず遠い目をするワタクシ。

緑御前の亀治郎が地味。やはり姫キャラじゃないのよ、この人は。松葉の萬次郎が、案外、可愛い。

『弥栄芝居賑 猿若座芝居前』

中村座 座元:中村勘九郎 改め 勘三郎
同   若太夫:中村勘太郎
同   若太夫:中村七之助
男伊達 音羽の菊五郎:尾上菊五郎
同   大和屋三津五郎:坂東三津五郎
同   お祭橋之助:中村橋之助
同   四ッ花菱の染五郎:市川染五郎
同   音羽屋松緑:尾上松緑
同   成田の海老蔵:市川海老蔵
同   萬屋獅童:中村獅童
同   大和屋弥十郎:坂東弥十郎
同   高島屋左團次:市川左團次
同   高砂梅玉:中村梅玉
女伊達 高輪玉三:坂東玉三郎
同   萬屋お時:中村時蔵
同   裏梅お福:中村福助
同   寒雀のお扇:中村扇雀
同   松島のお孝:片岡孝太郎
同   音羽のお菊:尾上菊之助
同   澤瀉のお八重:市川亀治郎
同   京屋のお芝:中村芝雀
同   加賀谷のお春:中村魁春
同   嵯峨野のお秀:片岡秀太郎
芝居茶屋「矢車」亭主 富蔵:中村富十郎
猿若町名主女房 お栄:中村芝翫
芝居茶屋「梅斗」女将 お京:中村雀右衛門

川尻清譚作の祝典劇。勘三郎襲名を祝っての上演で、口上の意味合いを持つ。

猿若町中村座の木戸前に、中村座座元の勘三郎、若太夫の勘太郎と七之助、町名主女房の芝翫、芝居茶屋女房の雀右衛門、芝居茶屋亭主の富十郎。さらに、本花道には菊五郎を筆頭に男伊達10人、仮花道には玉三郎を筆頭に女伊達10人。幹部花形がお祝いに駆けつけ、新勘三郎の襲名を寿ぐ。豪華だー! 眼福眼福。普段の口上もいいが、こういう口上も華やかでいいわ〜。

『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』

髪結新三:中村勘九郎 改め 勘三郎
白子屋手代 忠七、家主 長兵衛:坂東三津五郎
下剃 勝奴:市川染五郎
白子屋娘 お熊:尾上菊之助
白子屋後家 お常:片岡秀太郎
弥太五郎源七:中村富十郎

明治六年、中村座で初演された河竹黙阿弥作の世話物。亨保十二年に夫殺しを謀り処刑された白子屋お熊の事件を題材に、江戸市中の季節感を巧みに取り込んだ傑作。昼の部の襲名披露狂言。新勘三郎は昭和六十三年四月に国立小劇場にて初めて新三を演じたが、その公演中に父である十七世勘三郎が亡くなった。そういう意味でも、新勘三郎にとっては思い出深い作品だそうな。

材木問屋の白木屋は身代が傾き、後家のお常は、ひとり娘のお熊に持参金付きの婿を迎え、店を立て直すことを考える。しかし、お熊は手代の忠七と深い仲。自分を連れて逃げて欲しいと泣きつくお熊を、お常のためにも縁談を了承するよう説得する忠七だったが、出入りの髪結職人・新三にそそのかされ、ふたりで逃げることを決意する。その夜、店を逃げ出した忠七とお熊は……。

思い出深い作品という割には、新三の勘三郎がつまらない。新三は「小悪党だが、粋で小気味いい男」の筈なのに、全然キリッとしていないのだ。店先で忠七の髪を撫で付けながら話す場面は、髪の結い方が大仰でわざとらしいし、永代橋川端の場も最初から目つきの鋭い悪党になっていて、本性を表わしていくあたりの面白味がすっぽりと抜け落ちている。もしかして、夜の部に力を温存している?

まったく違う二役(典型的な色男の忠七と強欲な家主の長兵衛)を見事に演じ分けた三津五郎。彼のおかげで芝居が締まった。勝奴の染五郎も好演。いるいる、こういう奴。
お熊の菊之助は黄八丈もよく似合い、事件の発端となる「美人で評判の娘」に相応しい存在感。源七の富十郎は立派すぎ。なんつーか、落ち目の親分の滑稽さが欲しい。
最後は勘三郎と富十郎の切り口上で幕。う〜む、爽快感に欠ける《髪結新三》だ。

ところで、新三は初鰹を三分(さんぶ)で買うわけだが、今のお金に換算すると56,250円(お江戸換算機「あきんど」参照)だそうな。高くないか? とは言え、大金を当てにして、気が大きくなっているからね。

|

« シアターコクーン・オンレパトリー2005『メディア』 | トップページ | 十八代目中村勘三郎襲名披露 五月大歌舞伎 夜の部 »

2005年鑑賞記録」カテゴリの記事