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2005年7月25日 (月)

シアターコクーン・オンレパートリー2005『キレイ 〜神様と待ち合わせした女〜』

2005年7月25日(月) Bunkamura シアターコクーン

[作・演出]松尾スズキ [音楽]伊藤ヨタロウ [美術]高野華生瑠
[振付]康本雅子 [照明]大島祐夫 [音響]山岸和郎 [衣裳]戸田京子

シアターコクーンに松尾スズキって、合わねー。全然、合わねー。でも、気配りの人だから、それなりに合う作品を作っちゃうンだろうな。

本格ミュージカルと言ったところで、「どうせ『悪霊〜下女の恋』の延長みたいなものでしょ」と、かなり失礼な予想をしておりましたが、やはりそうでした(笑)。ちなみに、初演は観ておりません。

なお、ケガレ役の酒井若菜が体調不良のため直前に降板、代わって鈴木蘭々が出演。

ケガレ:鈴木蘭々
ミサ(成人したケガレ):高岡早紀
ハリコナA(少年):阿部サダヲ
カネコキネコ:片桐はいり
ダイズ丸、万一:橋本じゅん
マジシャン:宮藤官九郎
ジュッテン:大浦龍宇一
カネコジョージ:松尾スズキ
ダイダイカスミ:秋山菜津子
ハリコナB(青年):岡本健一
カミ:伊藤ヨタロウ
コスゲ、のぞみ:池津祥子
テルヤ、かなえ:宍戸美和公
谷川、看護婦:伊勢志摩
ヤマギシ、警備員、看護婦:顔田顔彦
黒眼鏡、ヤママムシ、マイタケ、ナチス:宮崎吐夢
マタドール:猫背椿
カウボーイ:皆川猿時
マキシ、ダイモク:杉村蝉之助
月五郎、カミ2:荒川良々

開演の前に客席でショートコント。電車男姿(アキバ系ファッション)の顔田顔彦が、「コクーン、キター!」と登場。ご丁寧にノートPCまで持っている。続いて、片手に寿司折りを提げた松尾スズキ。絵に描いたような酔っ払いサラリーマン。お客さん相手に軽く絡んで(すみません、ネタは忘れました)、ふたりとも退場。

舞台の左右に聳える高い建物? 樹木? と、そのふたつを繋ぐ橋。その下をトロッコが走り回り、4〜5台のTVモニターが置かれている。何とも渾沌とした空間。ここは「三つの国に分かれ、100年もの間、民族紛争が続く“もう一つの日本”」。そんな“もう一つの日本”で、誘拐され、監禁されていた少女が、10年ぶりに地上へ逃げ出す。過去を忘れた少女は「ケガレ」と名乗り、戦場で出会った奇妙な仲間たちと逞しく生きていく。そんな彼女を優しく見守る女性。それは、成長したケガレ=ミサだった。過去、現在、未来が交錯する不思議な世界で、ケガレは忘れた筈の忌わしい過去と向き合う……。

生きていくために人は誰かを犠牲にしなければならない。生きるってことは、キレイごとじゃない。人は日々ケガレていく。でも、そんな自分と真正面から向き合うことができれば、きっとキレイになれる。

やだなぁ、もう。こんなハートウォーミングな少女の再生物語を書いちゃって。「ケガレてケガレて私はキレイ」なんて歌詞で、客席の涙、思いっきり誘っているよ。

松尾スズキって、やはり気配りの人なのね。ちゃんと小屋に相応しい芝居を作っている。『キレイ』だけで《大人計画》の芝居を観た気になられても困るが(私が困ることでもないか)、これはこれでありかも。穢れて醜いものにこそ、本当の美しさが存在しているンだよ、って話でもあるわけで、一般向けを装いつつ、いつもの猥雑で不条理な味わいはちゃんと残っているし。

歌に関しては、せめて阿部サダヲぐらいの歌唱力(ピッチがすんごく安定していてビックリ!)は身につけて欲しいぞ。>ALL
声が出ていないうえに、楽器とのバランスも悪いから、歌詞が聴き取れない役者が多かった。とは言え、PAが入ると席によって状況がまったく違うからね。私は2階最前列だったが、たぶん、1階ではまた違った聴こえ方をしていたと思われ。

ケガレの鈴木蘭々はまずまずの出来。2週間かそこらでここまで仕上げてきたのは立派。ただ、正直に言うと、『GHOST SOUP』(岩井俊二監督)の頃の蘭々で観たかったかも。ボサボサ頭が男の子みたいで可愛いンだが、微妙にカマトト入っているような。これがダイダイカスミの秋山菜津子までいっちゃうと、「二十歳の誕生日」とか言われても、「はい、そうですね」って、逆に納得しちゃうンだよね(笑)。不思議。しっかし、秋山菜津子って、絶対、期待を裏切らないわ。チャーミング!

ミサの高岡早紀には華がある。声質が蘭々と似ているのも、お互いが響き合う感じでよかった。それに、上半身の動きがと〜っても優雅。バレエか何かやっていたのかしらん?

ハリコナAの阿部サダヲは文句なしに可愛いし(少し痩せた?)、松尾作品初挑戦、ハリコナBの岡本健一も大健闘。登場シーンの跳び蹴り&メチャメチャ激しいキス(お相手は警備員の顔田顔彦)が素敵。あと、カスミの誕生パーティーで披露した女装姿も素敵。ファルセットも耳に心地よい。

ジュッテンの大浦龍宇一は真面目な人なんだろうね(『悪霊〜下女の恋』の時にもそう思った)。なんつーか、自分が納得しないと前に進めないタイプ? でも、だからこそ、あの濃いメンツの中に埋没することなく彼らしさを出せたのかな。

片桐はいりと橋本じゅん、松尾スズキをはじめとする《大人計画》の脇役陣は、皆さん安定している。

今回、改めて、役者・宮藤官九郎を認識する。彼が喋る台詞には、常に松尾の存在が感じられる。それはあるいは、宮藤自身も脚本家であることに起因するのかも知れない。とにかく、松尾の世界観を誰よりもリアルに具現しているのだ。やはり、役者・宮藤は松尾作品における重要なファクターなのね。作・演出もいいが、役者として舞台に立つ姿をもっともっと観たいな。

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