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2005年7月 6日 (水)

パルコ・プロデュース公演『LAST SHOW −ラストショウ−』

2005年7月6日(水) PARCO劇場

[作・演出]長塚圭史
[音楽]岡崎司、松崎雄一 [美術]小松信雄 [照明]佐藤啓

長塚圭史、30歳。昨年は、阿佐ヶ谷スパイダース公演『はたらくおとこ』の作・演出とマーティン・マクドナーの最新作『ピローマン』(パルコ劇場)の演出で、第4回 朝日舞台芸術賞と第55回 芸術選奨文部科学大臣新人賞をダブル受賞。今、「演劇界の期待を一身に背負う男」だそうな。

石川琢哉:北村有起哉
石川美弥子:永作博美
石川勝哉:風間杜夫
中島:中山祐一朗
渡部トオル:古田新太
ワタシ:市川しんぺー

新婚夫婦が暮らす小さなマンション。夫・琢哉はテレビ番組制作会社のディレクター、妻・美弥子(芸名は轟木都子)は子役時代がピークの女優。琢哉は、現在、動物愛護で話題の男・渡部トオルのドキュメンタリーを撮っている。カメラマンの中島と共に今日も密着取材を続ける琢哉と、仕事一筋の夫を温かく見守る美弥子。そんなふたりの前に、音信不通だった琢哉の父・勝哉が、突然、現れる。久しぶりの再会を無邪気に喜ぶ琢哉だったが……。

冒頭から漂う不穏な空気。日常と地続きにある非日常。新婚夫婦の幸せな生活は、いきなりの強烈なパンチで、いとも簡単に突き崩されてしまう。息子がいなければ愛する妻と別れることもなかったと信じている勝哉は、最愛の者を奪われて苦しみもがく琢哉の姿を見たいがために、彼の妻を苛む。

満たされない愛情から生じる暴力。手に入れられないものならば、壊してしまえ!

ンが、壮絶な復讐物語は、途中から何か別のものに姿を変える。グロテスクでシュール。でも、どこかファンタジーのような。

可愛いから動物を拾ってくる渡部。でも、そのすべてに愛情を注ぐことは難しい。だから、食べる。ひたむきに食べる。愛を込めて食べる。それは確かに狂った者の論理だが、琢哉は、最後には渡部の狂気を我が身に引き受けることになる。

役者のアンサンブルがいい。北村有起哉の頼り無さと永作博美の強靱さ。古田新太が愛らしい狂気を演じれば、風間杜夫は仮借なく責めたてる狂気を演じる。さらに、中山祐一朗の飄々とした存在感と、信じられない力技を見せた市川しんぺー。特に、市川しんぺーにはやられました。「両親の危機を救うために、急成長して産まれた子供」という有り得ない存在を、これほどまでに説得力を持って演じられるとは!

惜しむらくは、アクション・シーン。もうちょっとそれらしくできなかったのかしらん?

長塚作品は映像でしか観たことなかったが、どれも無駄に長いのよ。ンが、今回は余分な部分を削ぎ落とし、ラストはすっきり、それでいて余韻たっぷり。驚いたことに、背景には高速増殖炉の事故による大量殺戮のイメージまで広がっているのだ。

パーツ剥き出しのマンションの一室。それを回転させることで、その都度、違った表情を作り出す美術が巧い。音楽のセンスも素敵。うん。「演劇界の期待を一身に背負う男」という惹句に、偽りはなかったわ。

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