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2005年7月24日 (日)

七月大歌舞伎『NINAGAWA 十二夜』

2005年7月24日(日) 歌舞伎座

[原作]ウィリアム・シェイクスピア [訳]小田島雄志 [脚本]今井豊茂
[演出]蜷川幸雄 [装置]金井勇一郎 [照明]原田保

「シェイクスピアの喜劇を蜷川幸雄演出により歌舞伎化する意欲作」だそうな。今回の企画を考え、その実現に尽力した“若武者”菊之助が、琵琶姫と斯波主膳之助の双子の兄妹、さらに、琵琶姫が男装した獅子丸の三役を演じる。

斯波主膳之助、獅子丸 実は 琵琶姫:尾上菊之助
織笛姫:中村時蔵
大篠左大臣:中村信二郎
右大弁 安藤英竹:尾上松緑
腰元 麻阿:市川亀治郎
役人頭 嵯應覚兵衛:坂東亀三郎
従者 久利男:尾上松也
海斗鳰兵衛:河原崎権十郎
従者 幡太:坂東秀調
比叡庵五郎:市川團蔵
舟長 磯右衛門:市川段四郎
左大弁 洞院鐘道:市川左團次
丸尾坊太夫、捨助:尾上菊五郎

幕が開くと、舞台一面鏡張り。歌舞伎座の客席がそのまま鏡に映し出される。幽玄。思わず、客席から感嘆の声が上がる。やがて舞台に明かりが入ると、鏡の向こうに満開の桜が浮かび上がり、チェンバロ、鼓、少年合唱隊による演奏が始まる。その音色に誘われるように花道から登場する大篠左大臣一行。

鏡=虚像と実像=二重性。つまり、作品世界の二重性(双子の兄妹、琵琶姫とその男装姿の獅子丸、二組のカップルなどなど)を象徴している。ま、ありがちと言えばありがちだが、その美しさには目を奪われる。

双子の兄妹・斯波主膳之助と琵琶姫の乗った船が紀州沖で難破。舟長・磯右衛門に助けられ紀伊の国に漂着した琵琶姫は、男装して獅子丸と名乗り、大篠左大臣に小姓として仕え、いつしか彼を愛するようになる。しかし、左大臣は公家の娘・織笛姫ご執心。姫に相手にされない左大臣は、獅子丸に恋の使いを命じる。すると、兄の死を悼んで喪に服し、左大臣には固く心を閉ざしていた織笛姫が、獅子丸に一目惚れ。

一方、織笛姫の屋敷には、居候の叔父・洞院鐘道と飲み仲間の安藤英竹、腰元・麻阿に道化の捨助、鼻持ちならない家老・丸尾坊太夫らがいた。お楽しみの邪魔をする坊太夫を懲らしめようと、鐘道と麻阿が一計を案じ、恋文の罠が仕掛けられる。

その頃、海斗鳰兵衛によって急死に一生を得た斯波主膳之助は、彼と共に左大臣の屋敷に向かっていた……。

長い。長過ぎる。もっとスピード感溢れる展開にできなかったのか?
そもそも、今井豊茂の脚本がシェイクスピアの原作に忠実過ぎるのよ。ただでさえシェイクスピアは台詞が多いンだから、それを単純に歌舞伎化したのでは冗長になるのも当たり前。もっと大胆に省略や意訳をする必要があったのでは?

花道をほとんど使わず、「登場人物が捌ける→舞台を回す」の繰り返しも単調。舞台が回る度に芝居の流れが途切れ、喜劇に必要なテンポも祝祭感も出てこない。だから、坊太夫をからかう計略も祝祭の一部にならず、単なる怒りや恨み、もっと言えば、イジメになってしまい、何とも不愉快。
それに、菊五郎劇団の公演に、三階さんの出番もなければ立ち廻りもないって、どういうこと?(ま、『十二夜』で立ち廻りも難しいだろうが……)

結局、準備不足なのよね。歌舞伎は身体性、シェイクスピアは言語性と、それぞれの特徴にはかなり大きな相違があるわけで、シェイクスピアの歌舞伎化に挑戦するなら、それなりの準備期間を用意して、じっくり取り組むべきだったのだ。

斯波主膳之助と琵琶姫、さらに琵琶姫の男装姿の獅子丸の三役を演じた菊之助は、身体や声の使い方でそれぞれの違いを出してはいたが、如何せん、主役としての求心力が弱い。また、兄妹を同時に登場させるため、お面を被った吹き替えを多用するのも興醒め。声まで出しちゃうから、場内爆笑。そういうところでウケてどうするよ?

亀治郎が、賢く、目端が利き、面倒見もいい麻阿を好演。ってゆうか、「亀治郎奮闘公演」と言いたくなるほどの健闘ぶり。ハッキリ言って、菊之助の代わりに彼が舞台を引っ張っていた。ンが、ちょっとやり過ぎのような。巧いのは認めるが、あれでは腰元というより芸者でしょう。

安藤英竹の松緑、思い切った人物造型は面白かったが、一歩間違えると知的障害者。菊五郎が、愚かな妄想に耽りながら勿体ぶって威張ろうとする坊太夫と、「阿呆を演じられるくらい賢い」道化・捨助の二役を見事に演じていたが、敢えて二役を早替りで勤める必要はなかったぞ。

左大臣の信二郎に漂う感傷が芝居に情調を加味し、鳰兵衛の権十郎と磯右衛門の段四郎がしっかりと脇を固める。また、ひたすら我が道を行く織笛姫の時蔵が清々しく、ある種の感動すら覚える。
ってことで、今回一番の出来はポスターかも(笑)。

【補足】

●役名の対比
参考までに、今回の役名と原作の役名を書いておく。

   斯波主膳之助  セバスチャン
      獅子丸  シザーリオ
      琵琶姫  ヴァイオラ
      織笛姫  オリヴィア
    大篠左大臣  オーシーノ公爵
 右大弁 安藤英竹  サー・アンドルー・エーギュチーク
    腰元 麻阿  マライア
役人頭 嵯應覚兵衛  役人
   従者 久利男  キューリオ
    海斗鳰兵衛  アントーニオ
    従者 幡太  ヴァレンタイン
    比叡庵五郎  フェービアン
  舟長 磯右衛門  船長
 左大弁 洞院鐘道  サー・トービー・ベルチ
    丸尾坊太夫  マルヴォーリオ
       捨助  フェステ

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