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2005年12月16日 (金)

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』

2005年12月16日(金) 新国立劇場 オペラ劇場

[振付]マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ
[作曲]ピョートル・チャイコフスキー
[台本]マリウス・プティパ(E.T.A.ホフマンの童話による)
[改訂振付]ワシリー・ワイノーネン
[指揮]ボリス・グルージン [管弦楽]東京フィルハーモニー交響楽団
[児童合唱]東京少年少女合唱隊

ディアナ・ヴィシニョーワを『くるみ割り人形』のゲストに呼ぶなんて、芸術監督の気が知れん……とか何とか言いながら、彼女が好きな私は、結局、観に行ってしまったよ。ロビーには大きなツリーが飾られ、気分はもうクリスマス?

マーシャ:ディアナ・ヴィシニョーワ
王子:アンドリアン・ファジェーエフ

ドロッセルマイヤー:ゲンナーディ・イリイン
シュタリバウム:内藤博
シュタリバウム夫人:湯川麻美子
フランツ:大和雅美
道化:グレゴリー・バリノフ
人形:さいとう美帆
黒人:江本拓

ねずみの王様:市川透
くるみ割り人形:八幡顕光
歩兵隊長:キミホ・ハルバート
雪の精:遠藤睦子、西山裕子

スペイン:西川貴子、マイレン・トレウバエフ
東洋:湯川麻美子
中国:遠藤睦子、吉本泰久
トレパック:丸尾孝子、楠元郁子、市川 透
パ・ド・トロワ:高橋有里、さいとう美帆、八幡顕光
ばらのワルツ:真忠久美子、厚木三杏、川村真樹、内冨陽子、陳秀介、中村誠、冨川直樹、冨川祐樹

【第1幕】

序曲が始まった途端、意識が過去へ飛んでいく。昨年、一昨年と菊地研が王子を踊った牧阿佐美バレヱ団『くるみ割り人形』の残像が目の前に蘇る(今年は彼の王子を観られないため)。そんな状態だったから、幕が開いてしばらくの間、子供たちの中にヴィシニョーワがいることすら気がつかなかったのよ。「何かひとりだけデカイ女性がいるなぁ」なんてボーッと観ていたら、それが彼女でした。あはは。そこでようやく覚醒したわけで(をいをい)。

クリスマス・イヴの夜。パーティーに招かれた客たちが、三々五々集まって来る。最後に現れたドロッセルマイヤーは、プレゼントの大きな人形を抱えている。

人々で賑わう広間。美しく飾られたツリー。新国立劇場のプロダクションは本当に美しい。なのに……またかよ? また、ヅラかよ? う〜む、毎回必ず反応してしまうのは、自分でも、いい加減やめたい。

マーシャのヴィシニョーワは聡明で好奇心旺盛な少女。原作のイメージに近いかな。絶えず動いている(でも、決して無駄な動きはない)のが子供らしい。周りと比べれば、やや背が高いので目立ちはするが、それがイヤな感じになっていない。たぶん、本人も溶け込もうと努力していたと思われ。格闘家が気を殺すように、オーラを押さえていたような。

フランツの大和雅美、いつもながら腕白ぶりがキュート! ただ、ヴィシニョーワが相手だと、兄ではなく子分に見える(笑)。

人形のさいとう美帆は見た目が抜群にいい。あの金髪ヅラとピンクの衣裳は誰がやっても“薹が立ったフランス人形”になると思っていたが、彼女は驚くほど似合っていた。
道化のグレゴリー・バリノフ、人形振りがずいぶん巧くなったかな。

この版のドロッセルマイヤーって、どうしてこんなに“いい人”なのかしらん? つまんない。もっと妖しい存在感のドロッセルマイヤーの方が好きだな、私は。

あれ? 幕切れを変えた? シュタリバウム一家が表にお見送りに出ているぞ。雪の降る寒い夜に、そのドレス姿は不自然だろう? それに、前回はフランツとマーシャ兄妹の他にもうひとり女の子が広間に残っていたから、てっきりシュタリバウム家は三人兄妹だと思っていたのに、今年は何故かその少女はひとりでどこかへ帰っていったぞ。いいのか? 夜道をひとりで帰して、本当にいいのか?

……すみません、妙なことばかり気になって(どうやら今年から演出を変えた模様。他の日も同じだったそうな)。

【第2幕】

演出が変わったことで、眠りにつくナイトウェア姿のマーシャ(ちょっとロリータ入っている)は割愛。ロリータちっくなヴィシニョーワ、観てみたかったかも(笑)。

王子が登場した途端、いきなり大人の女性に変わるヴィシニョーワ。「ここからが本当の私よ!」とばかりに、オーラも全開。その切り替えの早さが清々しい。

王子のファジェーエフはと〜っても端正(少しマラーホフ入っている?)。ンが、ヴィシニョーワの相手役としては、いささか物足りない。彼女にはメチャメチャ濃いダンサーか、逆に、メチャメチャ爽やかなダンサーの方が遥かに似合うと思うよ……そうですか、贅沢ですか。

雪の精のソリストは今年も遠藤睦子と西山裕子。このふたり、並んで踊るとお互いがお互いを引き立てて、とってもいいのよ。

コール・ドも相変わらず美しい〜。以前はその整然とした美しさに物足りなさを感じたものだが、今ではそうした思いはどこへやら、観る度に胸を打たれる。
ま、ツッコミどころは他にたっぷりあるし(ヅラとか衣裳とか)、ここはもう、美しさに酔うべし。

【第3幕】

小舟に乗ったマーシャと王子はお菓子の国に到着。蝙蝠に襲われるシーンでは、自分も戦いそうな勢いでファジェーエフを追い掛けるヴィシニョーワ(笑)。王子が敵を追い払うと、やがて、美しく輝くお菓子の国が現れる。

スペインの西川貴子とマイレン・トレウバエフはラテンの血が足りません。サラリーマンみたいなスペインは観たくないっす。
東洋の湯川麻美子は素晴らしかった! 背中から腰にかけての柔らかなライン、よく撓る長い腕。彼女の東洋がこんなに色っぽいとは思ってもみなかった。
中国の遠藤睦子と吉本泰久は完璧。特に、吉本の「両脚を脚前挙して跳躍を繰り返すアクロバティックな踊り」はすんごかった〜。
トレパックの市川透が好演。初めて彼をいいと思ったわ。

パ・ド・トロワの八幡顕光は『カルミナ・ブラーナ』に続く抜擢だが、かなり表情が硬かった。海外の振付家に抜擢されると、次からはとりあえずいい役をつけてしまうのは毎度のことだが、若手の起用はもう少し慎重にした方がよろしいかと。

ばらのワルツの女性ソリスト4人(真忠久美子、厚木三杏、川村真樹、内冨陽子)は、ヅラはともかく、やはり美しい。中でも、川村の瑞々しい踊りと楚々とした存在感は、まさに私のツボ。早く主役で踊ってくれないかしらん?(できれば、『白鳥の湖』あたりで)

この版のグラン・パ・ド・ドゥは、マーシャひとりに対して王子と一緒に4人の男性がサポートする。「これは『眠れる森の美女』の“ローズ・アダージョ”を参考にしたものと考えられる」そうな。

それはともかく、4人の男性陣(陳秀介、中村誠、冨川直樹、冨川祐樹)のサポートはヤバ過ぎ。そりゃ、日本人ダンサーと比べれば、ヴィシニョーワはデカいと思うよ。ンが、だからと言って、あんなに不安定なリフトがありますか。落とすのではないかと、観ているこちらの方が恐くなる。それでも満面に笑みを浮かべ観客を魅了していたヴィシニョーワ。さすがっ!

ラストはナイトウェア姿のマーシャ。目を覚まし、枕元の人形を抱き上げる。ナイトキャップなし(従って、ロリータ味も薄い)。
ヴィシニョーワは王子の登場からここまでをオーラ全開で突っ走るから、1幕のマーシャとは別人のよう(笑)。いくら何でもちょっと成長し過ぎって気がしないでもないが、「幼い少女がひとりの若者(くるみ割り人形)を愛する乙女へと成長してゆく」姿を鮮やかに描くという意味では、これもありかな。

終わってみると、驚くほどファジェーエフの印象が薄い。やはり、ヴィシニョーワの相手として、イーゴリ・コルプ(今年1月に観た新国立劇場『白鳥の湖』)は特別だったのね……。

カーテンコール。「両脚を脚前挙して跳躍」で登場した吉本に、観客も大喜び!

指揮者のボリス・グルージンは、ダンサーに合わせて途中でテンポを変えるのはいいが、いささか極端のような。却って、踊りにくそうなシーンもあったぞ。

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