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2007年5月22日 (火)

團菊祭五月大歌舞伎 昼の部

2007年5月22日(火) 歌舞伎座

明治二十年に井上馨邸にて催された天覧歌舞伎。その時の主演目が『勧進帳』。それから百二十年目を迎える今年、『勧進帳』は、三月にパリ・オペラ座で初演され、四月には鳥居坂の国際文化会館(井上邸のあった場所だそうな)で天皇皇后両陛下臨席による天覧が行われ、さらには今月の團菊祭と、三ヶ月連続で上演される。何だかよくわからんが、とりあえず、めでたい。

『泥棒と若殿』

松平成信:坂東三津五郎
家老 梶田重右衛門:坂東秀調
警固の侍 鮫島平馬:片岡亀蔵
同    岡野甚吾:坂東亀三郎
同    成田作兵衛:坂東亀寿
支配役 宝久左衛門:片岡市蔵
伝九郎:尾上松緑

山本周五郎原作の同名短篇小説を舞台化したもの。矢田弥八による脚色で、初演は昭和四十三年歌舞伎座。久しぶりの上演で、ほとんど新作って感じ?

大聖寺の領主・松平大炊頭の次男・成信は、城代家老の陰謀により、荒れ果てた御殿に幽閉されている。その破れ御殿に忍び込んだ泥棒が伝九郎。盗むものはおろか、食べ物さえない有り様に驚いた伝九郎は、逆に成信の世話をし始める。

三津五郎が、一度は市井の人として生きる決意をしながらも、最後には武士として生きることを選ぶ成信を好演。
松緑も人のいい伝九郎を生き生きと演じている。台詞にもう少し江戸っ子らしさが出ると、なおいいかも。

暗転が多いのが玉に瑕。演出にもうひと工夫欲しい。

天覧歌舞伎百二十年記念
『勧進帳』

武蔵坊弁慶:市川團十郎
源義経:中村梅玉
亀井六郎:大谷友右衛門
片岡八郎:市村家橘
駿河次郎:市川右之助
常陸坊海尊:市川團蔵
富樫左衛門:尾上菊五郎

天覧歌舞伎百二十年を記念して上演される歌舞伎十八番『勧進帳』。一月の大阪松竹座も三月のパリ・オペラ座も観ていない私は、平成十六年五月 十一代目市川海老蔵襲名披露以来の團十郎の弁慶っす。

多少セーブしている印象の團十郎(体力的なこともあるンでしょう)。ただ、それが却って丁寧に演じているようにも映る。粘っこい口跡は相変わらずだが、どっしりした重量感はこの人ならでは。

菊五郎が、柔らかさの中にもピシッと芯の通った富樫を演じ、團十郎の弁慶をきっちり受ける。
義経の梅玉、余計なことは何もしない端正さが気持ちいい。

なんつーか、“大人”の勧進帳というか、まとまりのあるいい舞台でございました。
それはともかく、飛び六方での手拍子だけは勘弁して下さい。

『与話情浮名横櫛 −木更津海岸見染の場/源氏店の場−』

切られ与三郎:市川海老蔵
妾 お富:尾上菊之助
蝙蝠の安五郎:片岡市蔵
鳶頭 金五郎:河原崎権十郎
和泉屋多左衛門:市川左團次

初演は嘉永六年の江戸中村座。三世瀬川如皐が書き下ろした世話物で、海老蔵の与三郎、菊之助のお富の顔合わせは、歌舞伎座では初の上演。

木更津界隈の顔役である赤間源左衛門の妾お富は、江戸の大店・伊豆屋の与三郎と逢瀬を重ねていた。ンが、ふたりの関係に気づいた源左衛門によって、与三郎は体中を切り刻まれ、海へ身を投げたお富は和泉屋多左衛門に助けられる。それから三年。多左衛門の囲われ者となったお富のもとに、小悪党の蝙蝠安が相棒を連れてやって来る。頬被りで傷だらけのその男こそ……。

海老蔵の与三郎を初めて観たのは、平成十六年七月 十一代目市川海老蔵襲名大阪公演にて。その際、《見染》の与三郎を「坊ちゃんぽさを強調するあまり、妙に甘ったるく可愛くなってしまっている」と書いたが、今回も同じ。いや、むしろもっと酷くなっているかも。小悪党になった与三郎との違いを際立たせようという意図はわかるが、何気ない台詞でさえ笑いが起こるのは如何なものか。もっと普通にやろうよ、普通に。

“羽織落とし”にしても、段取りが透けて見えるというか、羽織を落とすために四苦八苦しているのがわかり過ぎるほどわかって興醒め。白塗りの顔が舞台に映えてそりゃもうキレイなのにね。

続く《源氏店》は、黙っていればいい与三郎なんだが、口を開くと唖然呆然。どうしてああいう語尾の処理になるかなぁ。ったく、キミは一体どこへ向かっているンだ?

お富の菊之助が、相変わらずギスギスしているというか、男っぽいというか。あの美貌に情と色気が加われば、それはそれは魅力的なお富になるだろうに。まだまだ若いってことなのかしらん? 何はともあれ、海老蔵と共に頑張っていただきたい。

蝙蝠安の市蔵がずいぶん手慣れてきた印象。
多左衛門の左團次が若手の中に入って舞台を締める。

『女伊達』

女伊達 木崎のお駒:中村芝翫
男伊達 淀川の千蔵:中村翫雀
同   中之嶋鳴平:市川門之助

文化六の年江戸中村座にて、四季の所作事『邯鄲園菊蝶』夏の景として初演。当初は、大阪の女伊達が男伊達を相手に踊ってみせる趣向になっていたが、現行は舞台を吉原仲之町に移し江戸の女伊達の踊りになっている。

舞台を彩る満開の桜。そこは吉原仲之町。女伊達・木崎のお駒が颯爽と現れ、淀川の千蔵と中之嶋鳴平の男伊達ふたりをいいようにあしらう。

お駒の芝翫、手堅いと言えば手堅いが、やや面白みに欠ける。
千蔵の翫雀がキビキビ踊って爽快。

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