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2009年12月 3日 (木)

マリインスキー・バレエ 2009年日本公演『眠れる森の美女』

2009年11月22日(日)〜12月11日(金) 東京文化会館 ほか
http://www.japanarts.co.jp/

[音楽]ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
[振付]マリウス・プティパ [改訂振付]コンスタンチン・セルゲーエフ
[台本]イワン・フセヴォロジスキー、マリウス・プティパ(シャルル・ペローの童話に基づく)
[装置・衣裳]シモン・ヴィルサラーゼ
[指揮]ボリス・グルージン [管弦楽]東京ニューシティ管弦楽団

オーロラ姫:ディアナ・ヴィシニョーワ
デジレ王子:イーゴリ・コールプ

国王:ウラジーミル・ポノマリョーフ
王妃:エレーナ・バジェーノワ
リラの精:エカテリーナ・コンダウーロワ
悪の精カラボス:イスロム・バイムラードフ

優しさの精:マリーヤ・シリンキナ
元気の精:アンナ・ラヴリネンコ
鷹揚さの精:エレーナ・ユシコーフスカヤ
勇気の精:ヤナ・セーリナ
のんきの精:ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク
求婚者たち:コンスタンチン・ズヴェレフ、マクシム・ジュージン、アレクセイ・ティモフェーエフ、デニス・フィルソーフ

カタラビュット/ガリフロン:ソスラン・クラーエフ
家来:アナトーリー・マルチェンコ

ダイヤモンドの精:ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク
サファイアの精:マリーヤ・シリンキナ(バレエ団の都合によりヤナ・セーリナから変更)
金の精:アンナ・ラヴリネンコ
銀の精:エリザヴェータ・チェプラソワ
フロリナ王女:エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
青い鳥:アレクセイ・ティモフェーエフ
白い猫:ヤナ・セーリナ(バレエ団の都合によりクセーニャ・オストレイコーフスカヤから変更)
長靴をはいた猫:フョードル・ムラショーフ
赤ずきん:エレーナ・ユシコーフスカヤ
狼:アナトーリー・マルチェンコ

いや、もう、すんばらしかったですsign03

あんなにも圧倒的なオーロラ姫を見せられてしまったら、ヴィシニョーワの足元にこの身を投げ出し平伏するしかないでしょう。カーテンコールでは、『眠り』につきものの多幸感とはまったく別物の、一種異様な高揚感に突き動かされて、スタンディングオベーションまでしちゃいました。

ンが、頭の片隅では、「果たして、これが本当に私の観たかった『眠り』か?」という問い掛けが絶えずなされており、その答えは、やはり「否」。改めて舞台の不思議を思ふ。

プロローグは深い青色とパステル色の世界。
次々と現れては踊る妖精たち。その中で、一際、光り輝く存在のコンダウーロワ。長い手脚が描く優美なラインや、ひとつひとつのポーズの美しさに、思わず嘆息。リラの精が特別な存在だということがすんなり納得できる。
カラボスのバイムラードフも面白かったっす。顔を塗りたくっていても美人だわ〜(笑)。

第1幕は若草色の世界。
幕開きのワルツにうっとりしているうちに、気がつけばオーロラ姫の登場。あら、意外と可愛いじゃん、ヴィシニョーワ。その印象は踊り出しても変わらず。盤石なテクニックと女王のようなオーラを放ちながら、それでいて初々しくもあり、結果的に舞台といい感じに馴染んでいる。なんつーか、奇跡のような、とでも言いましょうか。実に、実に実に見応えのある一幕でございました。

第2幕は黄金色の世界。
オーロラ姫に魔物入ってる? すんごく怖いンですけど? ま、100年も眠っているお姫様なんざ、よく考えれば尋常じゃないわけで、怖くもなりますがな。ンで、そんな姫にのこのこ付いていく王子だって、コールプぐらいなものですがな。ってゆうか、リラの精の前で跪いたり、例によって唇半開きでオーロラ姫を追い掛けたりしているコールプからは、恋だの愛だのといった甘やかな感情よりも、畏敬の念、もっと言えば、畏怖の念のようなものを感じて、あぁ、これもまたありかな、と。

リラの精に導かれ、小舟に乗って宮殿へ向かう王子。宮殿へ続く階段を恐る恐る上る王子を目にして、ふと、泉鏡花の『天守物語』を思い出す。そうかそうか、ここは人外魔境か。ヴィシニョーワのオーロラ姫なら、王子に向かって「帰したくなくなった、もう帰すまいと私は思う」ぐらい言いそうだものな(笑)。

第3幕は純白の世界。
登場からオーラ全開のヴィシニョーワ。白地に銀の刺繍を施したロングドレスがよく似合っていて、すっげーゴージャス。彼女と共に招待客を迎えるコールプの姿に、思わず遠い目をするワタクシ。2003年6月、新国立劇場バレエ団にゲスト出演した『パキータ』でクネクネ踊っていた頃から隔世の感だわ(ちょっと大袈裟?)。ほんっとに大化けしたね、この人。

招待客はお伽話の登場人物たち。お伽話と言えば聞こえはいいけど、要は人外魔境。現実の世界では王子は行方不明者扱いなんだよ、きっと。「みんな心配してるかなー。でも、“美しく、気高い、そして計り知られぬ威のある姫君”と結婚するンだからいいかなー」と、王子が思ったかどうかはともかく、そんな人外魔境でも構わないと思わせてしまうほどのとてつもない魅力がこの姫にはあるぞ、と。ンで、そんな姫と結婚してしまうほど王子はチャレンジャーだぞ、と。

……すみません。『眠り』ってこんな話じゃないっすよね。

さて、ひとたび踊り出すと、ヴィシニョーワの集中力──彼女の集中力というよりも、観客に強いる集中力、あるいは、求心力と言ってもいいのかも──が半端じゃない。他はまったく目に入らない。こちらの感情をやたらと増幅させて、ただもう、胸苦しくて、胸苦しくて、胸苦しくて……。今こうして思い返しても、舞台の記憶ではなく、その胸苦しさばかりが蘇ってくる。

ってことで、すんごいものを見せてもらったのは確かだし、たぶん、この舞台は一生忘れられないと思う。ただ、今の私が観たいのは、マリインスキーの『眠れる森の美女』であって、ヴィシニョーワのそれではない、というだけのこと。

そうそう、フロリナ王女のオブラスツォーワは、耳をすますポーズが優し気で、そりゃもう可愛かったっす。音楽性にも溢れていて、これからが楽しみだわ〜。

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