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2010年11月24日 (水)

世田谷パブリックシアター 現代能楽集V『「春独丸」「俊寛さん」「愛の鼓動」』

2010年11月16日(火)〜28日(日) シアタートラム
http://setagaya-pt.jp/

能「弱法師(よろぼし)」「俊寛」「綾の鼓」より

[企画・監修]野村萬斎 [作]川村毅 [演出]倉持裕
[美術]堀尾幸男 [振付]小野寺修二 [衣装]半田悦子
[ヘアメイク]宮内宏明 [挿入歌作曲]伊藤ヨタロウ
[照明]杉本公亮 [音響]尾崎弘征

「春独丸」

女:久世星佳
春独丸:岡本健一

小須田康人、玉置孝匡、粕谷吉洋、麻生絵里子、高尾祥子、西田尚美

演出家曰く、「親に捨てられた子供の話」。
能「弱法師」において、父に捨てられ盲目の乞食となった俊徳丸は、本作では、母に目を潰された挙げ句に捨てられ、盲目の占い師から政治家へと華麗なる転身を遂げる春独丸として登場する。

基本はふたり芝居。ただ、5人の俳優がバックダンサー(?)として舞踊を担当。能=身体性=舞踊ってことなんでしょうけど、鍛練されていない身体で踊られても……(ダンサーとは違うとわかっちゃいるけど、鍛練された身体を見慣れた目には、到底、耐えられませんの)。
それにしても、最近、この手の身体表現──コンテンポラリーダンスというか、日常的な所作の延長のような動きというか──が増えてますね。

岡本健一は、未だ衰えぬ美貌とかつてのアイドルだけが持つ独特のオーラで、盲目故に人の心が読める異形の者・春独丸を見事に演じてみせた。占い師としての人気が高まると、ギターの弾き語りを披露。まだまだ歌もいけるじゃん(笑)。
久世星佳も、過去に囚われ、虚実のあわいを彷徨う女を好演。

チープなブルーシート、段ボールや棒、新聞紙で作ったジャケットなど、美術や衣裳に既視感ありありなんですけど?
春独丸の占いの客として出てくる西田尚美によって、「愛の鼓動」とリンクしているような、していないような。

「俊寛さん」

成経:玉置孝匡
康頼:粕谷吉洋
俊寛:小須田康人

赦免師1:麻生絵里子
赦免師2:ベンガル

演出家曰く、「島に取り残された罪人の話」。
島に流された俊寛と成経と康頼。ンが、成経と康頼は都に帰り、俊寛ひとりが取り残される……と、ほぼ原作を踏襲。「能二番の間に狂言一番をはさむ能の公演のような三本構成を意識」して、コメディに仕上げている。

狂言ごっこ、とでも言えばいいのか。流された先での現実逃避。ウミガメの卵とか、タコとか、赦免師の舟とか、笑える要素が満載で楽しかった。

やる気なさそうな赦免師のベンガルが、妙に印象に残る。

「愛の鼓動」

男:ベンガル
同僚A:岡本健一
同僚B:小須田康人

女囚・サチ:西田尚美

教誨師:久世星佳
刑務官:粕谷吉洋
囚人:玉置孝匡
ナースA:麻生絵里子
ナースB:高尾祥子

演出家曰く、「女にだまされた男の話」。
能「綾の鼓」における庭掃きの老人と美しい女御は、意識不明の娘を看病し続ける刑務官の男と保険金詐欺で人を殺した死刑囚の女に置き換えられている。

舞台前方に水を溜め、そこに本水を降らせ、最後は睡蓮を浮かべる。その絵的な美しさが忘れ難い。刑務官と死刑囚の関係を描いたメチャメチャ暗い話なんだけど、父の命と引き換えのように目を覚ます娘に、ささやかな希望が感じられる。

刑務官を演じるベンガルの飄々とした存在感が、逆に悲劇を強調する。

今回は敢えて劇作と演出を分けたそうな。川村毅の演出で観てみたい気もする……と思っていたら、日本大学芸術学部演劇学科の舞台総合実習でやるのね。

◆ ポストトーク ◆
とにかく、和やかで楽しいトークでした。出演者は倉持裕、岡本健一、久世星佳、ベンガル、西田尚美。聞き手として、世田谷パブリックシアターのスタッフ。例によって、記録ではなく記憶です。

──まず、倉持さんの演出はいかがでしたか?
岡本「自由にやらせてくれました。むしろ、あまり頼っちゃいけないのかな、と。自分より若い演出家は初めてだったンだけど、劇場入り直前に『何かあれば』と訊かれて、『何もない』と答えていたのがいい」

──それは完璧だということ?
倉持「毎回ないです。劇場入りだからって、特にないです」

──他の方は?
西田「私は倉持さんの演出は2回目なので、ビシビシやられました(笑)」
ベンガル「僕には合うかな。『あの辺にいて下さい』なんていう指示も、一々、納得できるの。動かし方が上手なんだよね」
久世「真摯に人を見てる。愛情がある。ダメ出しをちゃんと聞きたくなる底力がある」
ベンガル「はっきりしたイメージを持っているから、きっと自分の思った通りに演出できてる筈」

──違う演出家がやったンじゃないか? というぐらい演出を変えたいおっしゃっていましたが、それはどうしてですか?
倉持「オムニバスという形式は退屈になりがちなので、飽きさせないために」

──演出のポイントは?
倉持「『春独丸』はエンターテインメント。『愛の鼓動』はリアリズム。キャストも同じ視点で選んでます」

──『春独丸』で親子を演じてみていかがでしたか?
岡本「久世さんは何でも受け入れてくれる」
久世「美しい息子。それだけで成立する。伸び代のある作品なので、千穐楽まで楽しみ」

──歌うのはいかがでしたか?
岡本「気持ちいいですね。しかも、ずっと目を閉じているので、客席の足音(途中で入って来たお客さんの足音に惑わされたりするそうな)、吐息、声、歌の響きなど、凄く感じます」

──『愛の鼓動』のベンガルさんは二の線?
ベンガル「そんなつもりはないです(笑)」

──複雑なドラマですよね?
ベンガル「でも、相手のセリフを聞いていると、余韻が伝わってきて間が取りやすいので、余計なことはしなくていいのかな、と」
西田「セリフが覚えやすいですよね」
ベンガル「その割には間違えてたよね(笑)。この人は、たぶん、イメージをはっきり決めない人なんだと思う。だからセリフも間違える」
倉持「全然、覚えてくれなくて(笑)」

──西田さんはモデル、ベンガルさんは小劇場、久世さんは宝塚、岡本さんはアイドルと、出自が違う俳優を起用した理由は?
倉持「先程の話(演出のポイント)にも通じるけど、『春独丸』はふたり芝居で、セリフもお客に対するモノローグが多い。久世さんはお客と目が合っても見返せるだろうし、岡本さんは実際に5〜6万人の前に立っている人で、春独丸の半生を経験しているようなものだし」
岡本「してない、してない(苦笑)」
倉持「『愛の鼓動』の場合は、その役にぴったりの俳優より、少しずれている方が合うと思って。暗い役だからこそ、喜劇役者としての味があるベンガルさんがいいし、保険金殺人を犯す役だからこそ、あっけらかんとしたイメージのある西田さんがいい」

──『俊寛さん』はどうですか?
倉持「能−狂言−能という構成にしたかったので、コントを作るつもりで、捻らないようにした。最初は演出プランもなかった」

──堀尾(幸男)さんの美術……モダンだけど、能の橋懸かりのようなものもある……はいかがですか?
岡本「床が白いからすぐ汚れちゃう。でも、白い床はいいですよね」
──実は、開演前にキャストもスタッフも総出で掃除してるンですよ。

──切り穴に飛び込むのはどんな気分ですか?
岡本「いいですよ」
西田「ええ。楽しいです」

──他の方はいかがですか?
久世「美しいです」
ベンガル「最後の睡蓮が好き。千穐楽、頭に睡蓮を乗せてあそこ(舞台前方の池)から出てきたい(爆)」
倉持「水の中で息が続くならどうぞ(笑)」

──うちのスタッフは優秀なんですけど、プリセットに時間がかかる美術なんです。

そんなこんなで、ちょうど時間となりました〜。

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