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2017年6月11日 (日)

ヴィレッヂ『クヒオ大佐の妻』

2017年5月19日(金)~6月11日(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト
http://kuhiowife.com

[作・演出]吉田大八 [美術]伊藤雅子 [照明]佐藤啓 [音響]加藤温
[衣裳]高木阿友子 [ヘアメイク]二宮ミハル [殺陣指導]前田悟

早川夏子:宮沢りえ
今井:岩井秀人
佐知江:川面千晶
シンイチ、河端:水澤紳吾

チラシからイメージしていたものとはまったく違った。えっ、そっち? みたいな。
珍しく自分から「これ観たい」と言った連れは、殊の外、気に入った様子で何より。

舞台は2003年のイラク戦争開戦前夜。
古びたアパートでミシンを踏む女、夏子。彼女は、歴とした日本人でありながら「ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐」と名乗る結婚詐欺師(自称、アメリカ空軍特殊部隊パイロットでカメハメハ大王やエリザベス女王の親類)の妻。なかなか帰ってこない夫を待ちながら、得意の洋裁で生計を立てている。

そんなある日、荷物を届けにきた宅配業者の今井から、高校の同級生だと声をかけられ……。

休憩なしで約1時間50分。前半の、夏子と今井、さらには、詐欺被害者の佐知江、クヒオに妻を寝取られた河端とその息子のシンイチたちが交わす、不在のクヒオを巡る会話は面白い。ンが、それはやがて、“アメリカ的なもの”に対する日本人男性のコンプレックスや日本の敗戦意識へと帰着していく。

終盤。大きな布が客席全体を覆う。布の意匠は星条旗と日の丸を合わせたものになっていて、あー、アメリカと日本の関係を描きたかったのか、と。

なんつーか、ちょっと強引というか、会話を通して浮かび上がってくるクヒオの人物像が多面的だっただけに、ちょっと勿体ないというか。とにかく、最後は置いてきぼりにされた気分。

夏子の宮沢りえ。クヒオを待ち続け、その身の内に大きな虚無を抱え込んだ女。クヒオからの電話は着信音が鳴る前にわかると言い、鳴りもしない電話の受話器を取り、一方的に話し続ける、その狂った熱情が切ない。
以前はよく喉を潰していたけど、最近はそんなこともなく、台詞も非常にクリア。

今井を演じた岩井秀人は巧いっすね〜。飄々としてて滑稽なのに、うすら怖い。
佐知江の川面千晶も、人がよくて頭悪そうな女を演じて見事。岩井と同じハイバイ所属なのね。ハイバイ、そのうち観てみようかな。

父親と息子の二役を演じた水澤紳吾は不思議な役者だわ。子供と言われれば子供だし、大人と言われれば大人だし。

細部まで作り込まれた美術──二間のアパートで、床も壁も扉もそこはかとなく傾いでいる──が秀逸。

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