« あぁ、なんてこと…… | トップページ | イングリッシュ・ナショナル・バレエ 2017年日本公演『海賊』 »

2017年7月 9日 (日)

年代順は諦める

ヒューマントラストシネマ渋谷『嘆きの王冠 〜ホロウ・クラウン〜』を観る。上映スケジュールが合わず、『ヘンリー五世』を飛ばして『ヘンリー六世 Part1 & 2』。

Hollow_henry_vi

戦争、権力闘争、裏切り、復讐、愛憎……いろんな要素が入っていて、これまでで一番の面白さ。3部作の原作を2部にまとめるため大鉈を振るっていて、それがまた巧いンだわ。

ヘンリー六世のトム・スターリッジが、実に、実に実に繊細。
対するマーガレットのソフィー・オコネドーは、まさに「虎の心」を持ったアマゾネス。ヨーク公をいたぶるシーンとか、ほんっとに怖かった。

Part1ではシルエットのみの登場だったリチャードを、Part2ではベネディクト・カンバーバッチが演じる。ヘンリー六世の暗殺に向かうあたりからリチャードのカメラ目線モノローグが始まるので、そのまま『リチャード三世』も観たくなってしまった(時間の都合で無理だったけど)。

カンバーバッチと言えば、『SHERLOCK/シャーロック』でジム・モリアーティを演じたアンドリュー・スコットがフランス王ルイだった。

Part1上映後に、翻訳家の松岡和子さんと東京大学教授の河合祥一郎さんによるトークショーあり。以下、覚えていることを簡単に。

サフォークとサマセットをほとんどひとりに集約。
本来、マーガレットの愛人はサフォーク。それを映画ではサマセットにしている。

3部作を2部作にまとめているので、かなり整理している。
カンバーバッチ扮するリチャード三世を中心に再構成したのではないか。

王冠の行方を描き、他はバッサリ切っている。原作には庶民もたくさん出てくる。
映画料理人の腕がよくわかるので、ぜひ原作を読んでください。

役者は、皆、素晴らしい。
ヒュー・ボネヴィル(グロスター公ハンフリー)、ソフィー・オコネドー(マーガレット)、アントン・レッサー(エクセター公)などなど……。

ヨーク公の三兄弟(本当は四兄弟だけど、末弟はすぐ殺されてしまう)=三つの太陽。SONとSUNが掛かっている。
Part1のラストシーン、リチャードはシルエットだけで登場する。影の存在であることを象徴している。

最後にQ&A。

──ヘンリー四世には4人の息子がいた筈ですが、クラレンスは、その後、出てきません。どうなったのでしょうか?
松岡「言及されてないですね。あまり活躍しなかったのかも知れません」

──シェイクスピアが歴史劇で描きたかったことは何でしょう?
松岡「戦争の悲惨さ。父と息子の関係、その多様性」
河合「何故、人は争うのか? リチャード六世はひたすらそのことを問うている。王冠があっちへ行ったりこっちへ行ったり。どちらでも同じ」

──リピーターも多いと思いますので、楽しみ方を教えてください。
河合「音がキレイ。音に集中して観るのはとても贅沢な見方」
松岡「映画はリアリズムだけど、リチャード三世は舞台のようにカメラ目線でモノローグ。カンバーバッチを見つめながら声を聞いてうっとりするものいい。原作との違い(戸外が室内になっていたり、その逆があったり)も楽しんで」

──マーガレットを黒人にしたのは何故でしょうか? また、実際にはどういう女性だったのでしょうか?
松岡「王の娘で美人」
河合「ヘンリー六世が絵を見て結婚を決めたくらいの美人。BBCの制作なので、ユニオンがあり、民族で差別できないことになっている。国籍が違うことに彼らは慣れている」

◎本日の読書
 『寝た犬を起こすな』イアン・ランキン

|

« あぁ、なんてこと…… | トップページ | イングリッシュ・ナショナル・バレエ 2017年日本公演『海賊』 »